アメリカンV8の復権に超期待
そのなか、筆者の予言とまではいかないが、期待としてトランプ新政権となり「アメリカンV8の復権」をぜひともと願っている。アメリカのV8といえば、過去には日本国内を走っている、ある現行路線バスと同じ7000ccオーバーといったビッグブロックエンジンが乗用車に搭載されていた。冗談半分で「燃費はリッター当たり500メートル」などと揶揄されることもあるように、燃費性能とは無縁の存在であった。
現行モデルに搭載されるV8エンジンは、GM(ゼネラルモーターズ)系とステランティス傘下のクライスラー系ブランド車ではスモールブロックながら6000cc前後で、しかもいまでもOHVとなっている(フォードはOHC)。
あるメーカーのエンジニアからは、「V8エンジン、とくにOHVエンジンが奏でるエンジンサウンドは人間の耳に心地よく聞こえる音域となっている」という話を聞いたことがある。筆者もたまに日本で信号待ちをしている、ダッジ・チャレンジャーを見つけると、信号が青になって発進するのを待って、その加速音に聞きほれている。
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ドイツ車でも日本車でもV8エンジン搭載車はあるが、それらは結構緻密な設計がされたものになっている。筆者個人としては、アメリカのまさに「伝統工芸品」とでもいうべきものがV8 OHVエンジンであり、ドイツや日本車ほど緻密ではない、普及品ともいえるややラフな感じのするその特別な存在がアメリカンブランドのV8 OHVエンジンであると考えている。
例として、シボレーブランドのフルサイズSUVとなる「サバーバン」の市街地とハイウェイを組み合わせた燃費は16MPG(マイル/ガロン)。これをリッター当たりの燃費に換算すると、約7.1km/Lとなる。サバーバンが5300ccV8エンジンなのに対し、3500ccV6ツインターボとなるのであくまで参考比較にしかならないが、レクサスLXの燃費はエグゼクティブ仕様で8km/Lとなっている。V8 OHVエンジンは、昔のように「ガソリンを捨てながら走る」というレベルにはなっていない。これはV8 OHVながら気筒休止システムを採用するなど、燃費性能のケアもしっかり行われていることにある。
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残念ながら、いまどきのアメリカ車でV8エンジンを搭載するモデルは限定的となりつつある。アメリカンブランドとしてラインアップされているモデルの多くは、排気量の小さい直4エンジン搭載車ばかりで、しかも欧州由来やなかには中国や韓国から完成車輸入されているものもある。
トランプ新大統領の掲げる「アメリカ第一主義」の旗印の下、一部の皆さんからは筆者の想いにお叱りを受けることもあるかもしれないが、クルマ好きとしてはその歴史のなかでも、アメリカンブランドにしか作ることのできないV8 OHVが、「悪者」としてではなく注目を浴びるようになってもらいたいと思っている。