COTYのデザイン・オブ・ザ・イヤーは「トライトン」だが……デザインのプロも独自に選んでみた! (2/2ページ)

近未来感溢れる個性派デザイン

●最新EV的の定石を踏みつつ個性を出す

 具体的にフロントから見てみると、フラットなグリル面は昨今のEVの流行ですが、ヘッドライトの外形自体を自慢のトールハンマー形状とし、これを複数のLEDで構成した先進的表現が見所。また、パネル上のエンブレムの大きさや配置も的確で、グリルレスなのにボルボらしさがしっかり表現できています。

 ボディの側面も基本はじつにシンプルですが、たとえばボンネットラインにホイールにあわせた曲線を加えるなど、適度なアクセントが巧妙。また、リヤガラスの途中から早めにキックアップさせたベルトラインはボディに高い軽快感を与え、先述のようにファストバック的な表情も作り出しています。

 ブラックのルーフはいまどき珍しくはありませんが、単に屋根を黒く塗ってツートンカラーにしただけでなく、ボディのトータルデザインのなかに黒のルーフがしっかり組み込まれており、よく見かけるような「取って付けた感」がありません。

 リヤビューでは、テールランプを上下二段構造に見せる手法がユニークですし、そのテールランプとガーニッシュでパネルを囲み、フロントと同様の表情を作り出している点が巧いところ。もちろん、これらの表現はEVとしての未来感につながっています。

●素材感とカラーの巧妙なマッチング

 徹底してミニマムな表現としたインテリアも話題ですが、その造形がリサイクルの素材感にマッチしていることも注目点。さらに、「モスイエロー」や「クラウドブルー」など、彩度を落としたボディ色は北欧の自然を感じさせる一方、インテリアのリサイクル素材にも沿ったもので、そのトータルコーディネイトは見事です。

 ところで、デザインという視点で今回のノミネート車を見渡すと、もう1台「ランドクルーザー250」も非常に気になる存在です。そのまとまりのよさは秀逸ですが、ただ、同車が原点回帰として定番のシンプルさを目指したのに対し、EX30には従来にない新しさが随所に見られた点で一歩抜きん出ていました。

 ということで、個人的デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーはボルボEX30、次点がランドクルーザー250となります。まあ、異論反論はあるでしょうが、どこかに忖度した結果ではないのでご容赦を(笑)。さて、来年は本家イヤー・カーと意見が一致するかどうか……。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

愛車
いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

新着情報