環境のためのEVなのに1000馬力オーバーのハイパーカーってどういうこと? EVの存在意義を改めて考えてみた (2/2ページ)

排ガスを出さない点が何よりもメリット

 また、世界の電源構成は次第に脱二酸化炭素の方向へ動いている。たとえばAI(人工知能)の活用を狙う企業は、原子力発電への投資を考えている。再生可能エネルギーによる発電への期待も高い。21世紀が電気の時代と考えられるのは、そうした未来への投資が背景になる。

 そして今からEVに乗り出せば、廃車になるまでの長い年月において排出ガスを出さないことと、電源構成が改善されていくことが並行して進行し、環境は改善されていくことになる。

 ところが、エンジンを使い続ければ、10年後20年後も排出ガスを出し続けることになる。クルマの価値は、新車のときにだけ決まるのではない。数十年という長い年月を通じた価値を見極める必要がある。

 クルマが誕生して間もない時代から人間が追求したり憧れたりしてきた高性能化の動きが、EVで起きても不思議ではない。それを、ブランド力とする企業があり、それを選ぶ消費者が存在する。

 そのためにも、電力の脱二酸化炭素は急ぐ必要がある。ただし、再生可能エネルギーは気象が変化すれば、期待通りの発電ができなくなる懸念がある。たとえば、海水温度の上昇で海産物の漁獲量が減るといったことにも通じる。

 安定的に電力を利用するには、原子力発電が欠かせない。それに際し、課題解決に負担の多い軽水炉ではなく、トリウム溶融塩炉への転換が期待される。メルトダウンを起こさないなど、より安全であることによる電気代の低減は、安定した電力供給とともに経済の発展をもたらす期待がある。

 すでに中国は、先手を打ち、トリウム溶融塩炉の実証炉を稼働しはじめている。新エネルギー車の躍進とそれは、連動することになる。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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