あまりに強いラリーのイメージが裏目に
そんなデルタの2代目は、なんと初代の最終モデル(コレクション、正式名称ランチア・デルタ・アッカエッフェ・インテグラーレ・エボルツィオーネ・ドゥエ・コレツィオーネ・エディツィオーネ・フィナーレ)がまだ売っているタイミング、すなわち1993年にリリースされています。ランチアのお家事情で、フィアットのパッケージを使わねばならなかったのですが、これはアルファロメオ155と同じだったと聞けば少しは溜飲も下がるのかと。
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また、5ドア・ハッチバックのスタイリングもカロッツェリア・イデアがスマートにアップデートを行い、フィアット・テンプラや、もちろん155ともはっきりとした差別化に成功しているのです。しいていえば、ブリスターやウイングのなかったころの初代デルタにほど近いスタイルで、「シンプルでスマート」ともいえるもの。
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ですが、クルマ好きとしては獰猛で躍動感あふれるエボルツィオーネのイメージがあったわけですから「これじゃない」と一笑に付してしまったわけですね。WRCのレギュレーションが変わったことや、ランチアが参戦しなくなったことからホットな仕様が登場しなかったことも売り上げの足を引っ張ったといえるのではないでしょうか。
1999年に2代目の生産がひっそりと終了すると、デルタの名前は2006年のパリモーターショーまでカタログに載ることはありませんでした。この年はランチアの創立100周年というセレブレーションであり、また3代目デルタは同社にとって21世紀初のニューモデルという栄えあるものだったのです。
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フィアットと共有するチェントロ・スティーレによるデザインは、ところどころにランチアのモチーフが取り込まれたほか、「フライング・ブリッジ」と名付けられた広大なガラスルーフは、シューティングブレイクのニュアンスまで醸すもの。
実際、ラゲッジスペースは400リットルもの容量を誇り、ランチアらしいエレガントに実用性まで加えてみせました。さらには、BOSEのハイファイシステムのほか、フィアットがマイクロソフトと共同開発したインフォテイメントシステム「ブルー&ミー」を搭載するなど、ラグジュアリー感も十分だったかと。
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しかしながら、やっぱりデルタ好きにとってエレガント&ラグジュアリー要素は微妙だったのかもしれません。また、これも致し方ないのですが、フィアット・スティーロのパッケージを流用というのも、生粋のランチアファンとしては受け入れがたいものがあったのでしょう。
それでも、クライスラー・デルタの名前でもってイギリスで販売されると、アルカンタラを使ったインテリアや、吸気効率化システムのマルチエア搭載エンジンが評判となり、そこそこの売れ行きを示したのだとか(ランチアはイギリスから撤退しており、グループのクライスラーを販売戦略的に名乗ったとのこと)。
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誤解を恐れずにいえば、初代創始者が築いたものを息子や孫が活かしきれなかった、デルタにはそんなイメージが根づいてしまったかのようです。中古車市場での初代はすでに経済合理性を逸脱していますが、それ以外はこなれた価格。初代同様、もしかしたらそれ以上にレアなモデルかもしれませんが、初代原理主義者でもない限り、それなりに納得できるクルマであること間違いありません。