この記事をまとめると
■「エアバッグ」は1980年代にメルセデス・ベンツが開発した
■エアバッグには耐用年数はないため中古車でも安心して使えることになっている
■異常があった際はセンサーで知らせる仕組みになっている
エアバッグって交換不要?
エアバッグは、衝突事故での安全策として当たり前の存在となっているが、初装備からすでに50年以上が過ぎている。
衝突した際の人命を保護するため、シートベルトの装着が求められたとき、米国ではそれを嫌う風潮があり、シートベルトをしなくても対応できる装置の装備が求められた。それが1970年代初頭に米国ではじまった、注文装備でのエアバッグ採用であった。
エアバッグがより注目を集めるようになったのは、80年代にドイツのメルセデス・ベンツが、最上級車種のSクラスに注文装備とした際、その特許を公開したことがきっかけだ。安全装備は、誰もが採用できるようにするためというのが、特許公開の理由だ。同様の措置は、スウェーデンのボルボが、現在に至る3点式シートベルトを開発し、装備した際にも行っている。
こうした2社の英断により、現在の市販車は、3点式シートベルトとエアバッグを標準装備することができている。
日本車では、87年にホンダがレジェンドに装備し、続いてトヨタが89年にクラウンで注文装備の設定をした。その時代から40年近い歳月が流れている。そこまで旧い車種は、旧車として愛好する以外に接したり運転したりする機会は限られるだろうが、たとえば2000年以降のクルマでも25年が経つことになり、エアバッグはそうした中古車でも機能するのだろうか。
世界一の新車販売台数を誇り、日本車としてエアバッグ装備に長い経験をもつトヨタ広報に問い合わせたところ、「とくにエアバッグに関する耐用年数はない」との回答であった。
ただし、電子回路など、作動させるうえで関係する機器に不具合など生じた場合は、警告灯で知らせるようになっており、不具合部分を修理する必要がある。とはいえ、エアバッグの使用期限は設けられていないというのが実態で、中古車でも安心して乗れるといえるだろう。
そのうえで、エアバッグの正式呼称は、SRSエアバッグという。SRSとは、Supplemental Restraint System=補助拘束装置の頭文字で、エアバッグが、あくまで3点式シートベルトを装着した状態での補助機能であることを意味している。
70年代の米国では、シートベルトをしない代わりに安全を確保する機能としてエアバッグへの期待があったが、それでは衝突した際に乗員の着座位置や姿勢が移動することが考えられ、エアバッグの作動する範囲を逸脱する懸念がある。したがって、シートベルトで座席に正しく座った状態で、はじめて保護機能が働くのがエアバッグであることを明確に示すため、SRSと頭に名称が付く。
エアバッグは、空気で膨らませた風船のようなものであるため、衝撃がないように誤解されがちだが、パンッと張った状態に膨らんでいなければ、頭部や体を保護できないので、必ずしも無傷であるとは限らない。命は助かるだろうが、痛みはあるというのが、エアバッグの現実だろう。