この記事をまとめると
■CES2025にスズキが初出展して軽トラ「スーパーキャリイ」を展示した
■スズキ関係者は「アメリカで軽トラの新車販売を行う予定はない」といい切る
■大きな飛躍に向けてスズキはアメリカで着々と準備を進めていることを感じた
アメリカで四輪事業から撤退したスズキが「CES」に出展する意味
日本でもすっかり有名になったCES(セス)。コンシューマ・エレクトロニクス・ショーのことで、毎年1月に米ネバダ州ラスベガスで開催される世界最大級のIT・家電見本市だ。
見本市というだけあって、来場者は新商品や新技術の買付け担当や世界各国からのメディア関係者。
そんなCESにスズキが初出展した。ブースには、なんと軽トラ「スーパーキャリイ」が展示されていて、来場した人たちの度肝を抜いた。日本人にとっては「なぜ、こんなところに!」と思うだろうし、またアメリカ人にとっては「これが、噂のジャパニーズマイクロトラックか!」と驚くだろう。
日本でもネットニュースでよく話題に上るように、いまアメリカでは日本から中古の軽トラを輸入して、農家や工場などで使ったり、趣味で活用するのが静かなブームとなっている。
こうしたアメリカでのトレンドを意識しての、今回の展示であるが、スズキ関係者は「アメリカで軽トラの新車販売を行う予定はない」といい切る。
そもそも、スズキはアメリカで四輪事業から撤退している。
2012年11月にリリースを出しており、それによれば、ハワイ州を除いて、アメリカの四輪事業から撤退し、二輪車・ATV・船外機に事業を集約するとしている。四輪事業については、車両補償と補修部品への対応のみだ。
そんなスズキがなぜいま、CES初出展なのか、とても気になるところだ。
スズキが自社ブースで強調していたのが、「インパクト・オブ・ザ・スモール」という表現。そこには、「小・少・軽・短・美(しょうしょうけいたんび)」と、毛筆の書体で大きく書かれている。スズキが創業以来、大切にしてきた企業理念だ。
その上で「『ものづくりの理念』が環境問題やカーボンニュートラルなど社会課題に対処する大きな解決策となることを信じて」(鈴木俊宏社長)、CES出展を決めたという。
さらに、ブース内では国内外で連携しているベンチャー企業の電動車等を展示した。
じつはスズキ、アメリカでもモビリティだけでなく、IT関連のベンチャー企業との意見交換を積極的に行っており、次世代に向けたブレークスルーを模索しているのだ。日本でも、いわゆる『空飛ぶクルマ』であるeVTOL(電動垂直離着陸機)について、ベンチャー企業の研究開発や生産拠点としてスズキ関連施設を提供している。
スズキといえば、日本では軽自動車、そしてインドでは国を支える自動車産業界の大物というイメージをもつ人が少なくないだろう。
そんなスズキはいま、企業理念をベースとしながら、大きな飛躍に向けてアメリカで着々と準備を進めていることを、今回のCESブースで感じとることができる。