同じ気筒数でも点火順序が異なるのは番号配置の違いのため
もっとも分かりやすい直列4気筒を例に挙げてみよう。各シリンダーのクランクピン角度は180度。4サイクルエンジンはクランクシャフト2回転で各シリンダーのサイクルが完結するから、クランク2回転は角度に置き換えると720度となる。これをシリンダー数の4で割ると180度となり、各シリンダーをつなぐクランクピン角度の値となる。別のいい方をすれば、あるひとつのシリンダーが上死点にあるときは、残る3気筒のうちどれかひとつが上死点にあり、ほかの2気筒は正反対の下死点にあることになる。
ここで考えられるクランクピン角の組み合わせは、均等に180度接合とするか、1番シリンダーと2番シリンダーを180度、そして3番シリンダーを360度(見かけ上は0度)、4番シリンダーを180度とする、ふたつの組み合わせがが考えられる。
その上で、回転バランス(慣性力、慣性偶力)を考慮すると、1番と4番を360度、2番と3番を360度設定とするクランクピン角度が選ばれている。いい替えれば、1番と4番、2番と3番のピストンが同位置にあるということは、1番が圧縮行程のときは4番が排気行程、2番が吸気行程、3番が爆発行程にあることになる。このピストン位置から点火順を見ていくと1→2→4→3となる。逆に両ピストンが同位置にある2番を爆発行程、3番を吸気行程とすれば、点火順序は1→3→4→2となる。
直列4気筒の場合、吸気→圧縮→爆発→排気の各行程は吸気/爆発と圧縮/排気の行程が同方向の動きとなるため、2気筒が同じ角度(見かけは0度だが行程の上からは360度)となる。その組み合わせが1番と4番、2番と3番が360度になるため、ふたつの点火順序が考えられることになる。
V8の点火順序が多数あるのは、シリンダーの番号配置がメーカーによって異なっているからだ。片バンクのシリンダーを1〜4(反対側のバンクは5〜8)と割り振るか、1、3、5、7と奇数番号を割り振るか(反対側のバンクは2、4、6、8と偶数番号)によって、表記上の点火順順序は異なってくる。なお、V8は直列4気筒を2基つないだ構造となるので、4サイクルエンジンの場合、一般的なバンク角は720度割る8で90度となる。余談だが、V12は720度割る12となるのでバンク角は60度となる。
さらに、V8の場合、クランクシャフトの軸位相が2種類あり、振動で有利な90度のクロスプレーンと高回転で有利(=レーシングエンジン)な180度フラットプレーンが存在する。このことがさらに多くの点火順序を生み出す要因にもなっている。
エンジンを構成する各シリンダーが、クランクシャフト2回転(720度)で吸気→圧縮→爆発→排気の行程が行われることを前提に、シリンダー数やシリンダー配列に応じて決められるのが点火順序、こう考えてよいだろう。