
この記事をまとめると
■大型EVトラックの普及が現実的になってきた
■メルセデス・ベンツからはeアクトロスが登場
■eアクトロス600のスペックから大型EVトラックの是非を考える
大型EVトラックの増加で電力供給が不安定になる可能性もある
ついに大型EVトラックの普及が現実的になってきた。メルセデス・ベンツはeアクトロスを進化させ、621kWhのバッテリーを搭載させて航続距離500kmを実現しようとしている。しかし、そんなに大容量のバッテリーを搭載したトラックなど、果たして本当に現実的な選択なのだろうか。総重量44トン、最大積載量は22トンと発表されているから、荷物を運ぶためにほぼ同じ重さのボディとバッテリーを運んでいることになる。しかも、万が一発火事故などが起きれば、それこそ消火は非常に難しい。
eアクトロスに関しては、搭載されるバッテリーは中国のCATL製だといわれている。トヨタも提携するメジャーバッテリーメーカーだが、そのCATLの会長ですら先ごろ、「EVは現時点では1万台あたり0.96台の確率で火災事故を起こしている」とリチウムイオンバッテリーの危険性を認める発言をして話題になった。
同社のバッテリーは不良セル率を10億分の1にまで低減しているからこその発言だが、それでも大量のセルを搭載する大型EVトラックでは火災の危険性をゼロにすることはできないだろう。現時点で400kWの急速充電に対応しているほか、将来的には1000kW、つまり1MWもの大電流にも対応できる予定だ。しかし、これは普及していくことで大量に電力を消費するトラックが増えて、充電時には地域の電力供給が不安定になる可能性がある。
現時点でもドイツは原発を廃止して電力価格が上昇して市民は生活が苦しくなっている。自動車メーカーも生産時の電気代負担が大き過ぎて、どんどんドイツから国外への工場移転を進めているほどだ。欧州の自動車メーカーは、環境規制の厳しさに対応するために電動化を進めているが、そろそろ消費者もEVが環境に優しいクルマではないことに気づいている。
それでもトラックの電動化は必要だ。先ごろ、ドイツ・ハノーバーで開催されたIAAトランスポーテーション2024ではドイツのMANが巡航距離600kmを誇るEVトラックを展示したほか、オランダのDAFも航続距離500kmを誇るEVトラック、しかも比較的安全なリン酸鉄リチウムバッテリーを搭載したモデルを登場させている。
ちなみにDAFは水素エンジンの開発を進めており、数年後には販売する計画だ。ということは、DAFは水素を燃料としたエンジン車を初めて発売するトラックメーカーになりそうだ。
そして、電動化は化石燃料を使わないという選択だけでなく、自動運転を実現するためでもある。パワーステアリングが油圧から電動(トラックの場合は油圧と併用)になったのと同じように、エンジンからモーターへと走行する動力を変更し、自動運転への対応を進めるのだ。
そう考えると、トラックのパワートレインは、FCEV(燃料電池車)が最善という見方もできる。そこでトラックメーカーは目下、FCEVの開発を急いでいる。