この記事をまとめると
■多くのEVにはリチウムイオンバッテリーが使用されている
■リチウムイオンバッテリーは発火・炎上する可能性がある
■リチウムイオンバッテリーを安全に保管・輸送できる収納容器が登場
発火した際は自動消火機能で火災を抑える
EVの動力源であるバッテリーには高性能なリチウムイオンバッテリーが使われている。これは電池としてはエネルギー密度が高い反面、熱暴走の危険性があり、日常的に高温下で利用していると電解液が蒸発して内部でショートして発火・炎上する事故も起こることがある。最近はより安全性の高いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーも使われているが、こちらはエネルギー密度が低いのと、それでも発火や火災の危険性はゼロではないため、使用や管理にはそれなりに気を遣う必要がある。
海外では、EVは建物の近くには駐車しない(延焼する可能性があるため)と駐車場の位置も指定されたり、フェリーに積む台数も制限するなど、移動や保管への制約が増えている。日本はまだEVの登録台数が少ないことや、日本製EVの品質の高さもあって発火事故はほとんど聞かないが、それでも海外の事例の影響や消防法の改正もあり、扱いはシビアになってきているのだ。
目下の問題は使用済みとなったEVのバッテリーの扱いだ。リチウムイオンバッテリーはリサイクルして、また資源として再利用することが理想だが、現実はコストの問題とリサイクルのための環境整備が整っていないこともあって、多くを海外に輸出しているのが現状だ。
それでは資源不足が解決しないし、現状でも輸出前のリチウムイオンバッテリーの取り扱いに困っているケースが増えている。危険物用の倉庫でも預かってもらえなかったり、保管する量に制限があっていくつもの倉庫に分散して保管しなければならないケースなど、保管や輸送を安全に行いたいというニーズが高まっている。
そんな問題の解決策を国際物流総合展2024で見つけた。日進が開発した「LiBコンテナ」と「LiBボックス」は、リチウムイオンバッテリーを安全に保管・輸送できる、丈夫で安全対策をいくつも施している収納容器だ。LiBコンテナは貨物コンテナと同じ大きさで20F(フィート)と40Fが用意されている。LiBボックスは車載バッテリーパックを保管できる大型のタイプと、バッテリーセルやモジュールを保管できる小型タイプが開発されている。
ポイントは、万一にも内部に収めたリチウムイオンバッテリーが発火しても、周囲に延焼することなく消火(燃え尽きる場合も含めて)できること。熱感知カメラとIoTセンサーでバッテリーを監視し、万一熱暴走して発火した場合は自動消火機能で火災を抑え、そのまま保管し続けるのだ。
実験では日産リーフのバッテリーパックを使い、他社製リチウムイオンバッテリーに積み替えて150%まで過充電して熱暴走させ、発火事故を起こさせて消火するまで見守った。それでもLiBボックスは内部に火を閉じ込めたままで、延焼を防いだのだ。
これによって国内でリチウムイオンバッテリーの保管環境が整えば、リサイクル事業の目処もつきやすくなる。リチウムや希少元素の有効利用に一歩前進といえそうだ。