この記事をまとめると
■香川県の小豆島にある土庄町の人口は大幅に減少し職業ドライバーも不足している
■町民や観光客が安心して利用できる公共交通の整備が必要だ
■土庄町で実施された自動運転バスの実証実験について解説
自動運転レベル2のMinibusを使用
香川県の小豆島にある土庄町。人口は1万2846人(2020年国勢調査)の町である。小豆島全体が観光地として認識されていることもあって、海外からの観光客が増加傾向にあるという。同町もその恩恵に浴しているものの、人口減少には歯止めがかかっていない。1970年の人口は2万2037人であったというから、半世紀で1万人ほど減少したことになる。他の地域同様に、少子高齢化も進んでいるのだそうだ。
町内では高齢化が進んだことにより、運転免許証の返納者が増加している。そのために、公共交通機関によるきめ細かなサービスが求められるようになった。しかし、バス、タクシーの運転従事者も同様の理由でリタイアが進んだことにより、深刻なドライバー不足が起きているのである。結果として、町民や観光客の島内移動に深刻な支障が生じてきたのだ。
このような背景から、町民と観光客が安心して利用でき、かつ持続的に利用することが可能な公共交通の整備が必要になった。そこで、同町は2024年9月12~17日の6日間、自動運転バスの実証実験を町内の公道で実施した。同島内では、過去にも乗用車による自動運転の実証が実施されており、自動運転の導入に対して町民が概ね好意的であったことも、今回の実証実験を後押ししたようだ。
今回使用された車両はMinibus(Tier4.製15 名乗り電気バス)。自動運転レベルは、アクセルやステアリングを自動で制御してドライバーをサポートする「レベル2」(遠隔監視システムDispatcherを併用)にあたる。走行区間は土庄港高速艇ターミナル(平和の群像前)~エンジェルロード公園(小豆島国際ホテル)間の約2km。運賃は無料で、1日7往復した。
この実証実験は、「20年先の小豆島をつくるプロジェクト」の第2弾に位置付けられている。これは旅行代理店であるJTBが、地域行政、事業者との共創や自主事業の開発を通じ、観光地の実感価値向上と持続可能な発展を目指す「エリア開発事業」として、2024年8月から小豆島でスタートしたプロジェクトだ。
ちなみに第1弾は、「シェアサイクル事業」である。今後はAIによる自律運航無人ボートの導入に向けた実証のほか、言葉の壁を解消するための AI翻訳機ポケトークの導入などが検討されている。
前述のように、同島の観光客は増加傾向にあるものの、来島者の約7割が島内に宿泊しておらず、経済効果が極めて限定的なものになっていた。その原因は、宿泊施設の老朽化やキャパシティ不足、飲食店の不足、二次交通の脆弱性にあるという。同プロジェクトは、こういった問題を解決するために立ち上げられたのだ。
今回の実証実験は、自動運転のランクは「レベル2」であったが、この結果を検証することで最終的には「レベル4(システムが主体の操縦で、特定条件下における完全自動運転を実施)」を目指しているのだ。
今回、バスに乗車した町民や観光客などにはアンケートを実施しており、自動運転バスに関する感想、課題に感じたこと、必要性などについて意見などを聞いている。今後は得られた意見を参考に、プロジェクトを推進して同町、同島の活性化につなげていくことが期待されている。