
この記事をまとめると
■「2024年問題」はトラック業界を悩ます深刻な問題だ
■アサヒロジスティクスは女性ドライバーの活躍の場を広げる試みに挑戦
■アサヒロジスティクスのプロジェクトについて解説する
専用トラックのラッシングベルトは低い位置に装備
「2024年問題」はトラック業界にとって、解決に取り組まなければならない大きな課題である。実際に、トラックドライバー不足が顕在化しており、現場での混乱が起こっているという。そのようななかで、物流インフラ企業である「アサヒロジスティクス」では、女性ドライバーの活躍の場を広げることで、人材の確保を行うという試みに挑戦しているのだ。
この取り組みは、2019年に発足した「クローバープロジェクト」がベースになっている。同プロジェクトは、同社で働く女性従業員の活躍の場を広げ、気もちよく業務を遂行できる環境づくりを目指したものだ。ゆえに、トラックドライバーだけではなく、荷物の仕分け、保管、管理などといった物流業務全般に、広く女性が活躍できるステージを整えていこうとしているのである。
プロジェクトが発足した背景には、当時から懸念されていたドライバーを中心とする深刻な人手不足があった。物流業界において、2016年の女性就業者率は2.4%しかない。前年に制定された女性活躍推進法で、「女性は今後の経済成長の源泉」と位置付けられたこともあり、女性が物流業界で活躍できる環境を整えることが、業界における喫緊の課題として浮上したのだ。
このプロジェクトの一環として、同社では女性トラックドライバーの労働環境を向上させようと考え、女性専用のトラック「クローバー」を製作・導入した。導入実現にあたり、社内におけるアンケート収集や意見交換会の実施し、女性ならではの視点で寄せられた意見や要望を取り入れて、このトラックを完成させている。
その特徴は、
・トラックの名称であるクローバーを取り入れたオリジナルデザインを採用
・カーテンや小物入れなど、女性の「快適」を考えた装備品を導入
・女性の身長にあわせて、ラッシングベルト(荷物を動かないように固定するベルト)の収納フックを通常より低い高さに設置
などといったことである。この車両は2020年から導入を開始し、2024年9月には11台目が稼働を開始した。
近年、鉄道各社で女性運転士が増加したといわれている。また、路線バスや貸切・観光バスでも、女性ドライバーの活躍が増えているようだ。トラックドライバーにも、同様の現象が起きているといって間違いはないだろう。
かつて、「男性のほうが機械操作に向いている」などという、誤った認識が蔓延していた。しかし、今日のように女性ドライバー(運転士)が増加しても、何ら問題は起きていないどころか、物流業界の活性化につながっている。
同プロジェクトではこのほかにも、新たな女性向けユニフォームを導入するなどといった成果を挙げている。たとえば、ポロシャツの場合、
・上半分を白から水色に変更し、透け感が気にならないデザインにした
・シルエット全体を変更して、女性の体型を意識したサイズ展開にした
・スポーツウェアのような素材に変更し、軽量化と肌触りの柔らかさを追及
などという工夫をしているのだ。これまで男性中心社会であった物流業界で女性従業員の獲得を目指すためには、こういった女性の立場を考えたプロジェクトが即効性のある施策といえる。
ジェンダーレスが叫ばれる時代に、多様化が受け入れられる社風を醸成することは、営業並みに重要な経営課題になってきているようである。