再生カーボンの今後のさらなる活用についても言及 今回のトークイベントでは、SUBARU 航空宇宙カンパニー 基盤技術部の関根尚之氏とマツダ ブランド体験推進本部 ファクトリーモータースポーツ推進部の上杉康範氏も加わって、再生カーボンパーツが実現するまでの裏話が語られた。
まず、スバルの関根氏が、再生カーボンを使うことになった経緯を教えてくれた。
「もともと飛行機の主翼などを製造するときに出る廃カーボンをリサイクルできないかと模索していたところ、スーパー耐久に出場していたスバルBRZに、我々の再生カーボン材を利用したボンネットを製作することになりました。そんななか、S耐ワイガヤクラブの場でマツダさんから、『再生カーボンをうちのマシンへ提供できませんか』という打診をいただきました。我々としてはカーボン材をさらに再利用できるので、喜んで了承しました」と当時を振り返った。
再生カーボンについて語る(株)SUBARU 航空宇宙カンパニー 基盤技術部の関根尚之氏 画像はこちら
マツダの上杉氏は、後日、SUBARU 航空宇宙カンパニーの工場へ出向いたとき、再生カーボンの元となる廃カーボンを見て、「ここには宝の山がたくさんある」と感じたという。
再生カーボンの元となる廃カーボン材の写真 画像はこちら
実際、「MAZDA3 Bio concept」に採用された再生カーボンボンネットは、以前のボンネットと比較して、14kgもの軽量化を実現しているという。
今後の再生カーボンの利用に関して関根氏は、「工場にはまだこうした廃棄されるカーボン材があります。それをゼロにできるように、スーパー耐久での活用法を模索していきたいです」と語った。
今後のスーパー耐久での目標として、まずSUBARU Team SDA Engineering代表の本井雅人氏は「ターボエンジンのカーボンニュートラル化を目指しながらさらなる出力の向上を果たし、スバル独自のシンメトリカルAWDやシャシーなども見直して全方位で進化させることによって、勝てるマシンを目指していきます。さらに、再生カーボンについても、他社への提供も含めて鋭意進めていきたいです」と語った。
今後のS耐での目標を語るSUBARU Team SDA Engineering代表の本井雅人氏 画像はこちら
次にMAZDA SPIRIT RACING代表の前田育男氏は、「今後のMAZDA3 Bio Conceptは、燃料だけでなく、『走りながらCO2を回収する』システムを搭載して実験を行っていくとともに、ガチンコ勝負ができるようにマシンの戦闘能力を向上させていきたいです。ロードスターのほうは、将来のマツダのスポーツカーにつながるようなチャレンジをしていきたいと考えています。また、個人としてはドライバーとしてスーパー耐久で活躍できたらいいなと思っております」と総括した。
MAZDA SPIRIT RACING代表の前田育男氏が今後の目標を語る様子 画像はこちら
そして最後に、会場に来場していた一般社団法人 スーパー耐久未来機構の理事を務めている桑山晴美氏が登壇した。
「スーパー耐久のST-Qクラスがここまで成長するとは、クラスを新設したときには考えられなかったことです。ご賛同いただいている企業やチーム関係者の方々、それを報道していただいている各種メディアの皆さまに改めて感謝しております。2025年度に参加申請いただいているチーム数は80チーム以上ございますが、コースや設備によっては参加チームをある程度絞らなければならない状況です。非常に嬉しい悲鳴ですが、極力新規参戦チームの参戦をお断りをしないようにうまく調整して、今年度のスーパー耐久を盛り上げて行けたらと考えております」と挨拶した。
登壇した一般社団法人 スーパー耐久未来機構の理事の桑山晴美氏 画像はこちら
スーパー耐久は、FIA-GT3車両と市販車ベースのレース車両が混走する数少ない耐久レースとして、スーパーGTやスーパーフォーミュラとはまた違った魅力を持つレースカテゴリーとなっている。ST-Qクラスの新設がそうであるように、今後もスーパー耐久は時代とともに進化を果たしていくことだろう。そんな意味からも、ST-Qクラスとそこで戦うスバルやマツダの活躍からは目が離せない。