路線バスに車掌がいた時代も
バスガイドの活躍場所は観光バスが中心だが、じつは路線バスにも運転手以外の乗務員がいた。それが、鉄道ではおなじみの車掌である。業務は鉄道と似ており、ドア扱い、出発の合図、安全確認に加えて、切符の販売、改札、車内放送といった乗客対応と、車両誘導などの運転補助が主なものだ。一概にはいえないが、出発の合図を出すことから運行のマネージメントをしていると考えられ、ここがバスガイドとの立場の違いになるという解釈もある。
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路線バスの登場したころから車掌が乗務していたのは、停留所ごとに客の乗降があるためで、その対応の必要性からである。しかし、乗客が多いと業務のすべてに手がまわらなくなる。ドア扱いや狭い道での車両誘導は必須であるから、停留所間距離が短いと切符の販売もままならない。路線によっては、非常に多忙な業務であったといえよう。
料金収受、切符の販売を行うために、車掌には専用の首掛け鞄を持っていた。なかには、金銭(乗客が払った料金とつり銭)、切符、はさみ(切符入鋏用)、時刻表などが入っている。定位置は乗降ドアの後方のスペースで、マイク、合図用ブザーボタン、ドアスイッチ(手動ドアの場合はない)などが装備されていた。走行中は切符販売などのために、車内を巡回する。女性が多かったとされるが、男性も少なからず存在した。
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車掌が廃止されたのは、ひとえに経費(人件費)の問題である。路線バスは収支状態がよくない事業者がほとんどで、公共交通であることから赤字路線であっても運行を余儀なくされることが多い。料金箱、自動ドア、安全確認可能な大型ミラー、自動音声案内、料金均一化、整理券発行装置などが投入され、車掌の乗務は多くの事業者で1970年ごろには、ほとんど行われなくなっていった。
いまでは、高性能料金箱・カメラなどによる安全確認装置・電子マネーなどといった、新たなシステムの開発、導入が進められており、バスの車掌は完全に過去のものになってしまった。この先、自動運転技術が進むことでいずれ運転手もいなくなるだろう。バスガイドも、ロボット化するかもしれない。バスが乗客だけを乗せた移動する箱になる日も、そう遠くないということだ。