この記事をまとめると
■東京オートサロン2025に出展された2台のAE86が注目を集めた
■アメリカで著名なカスタムビルダー「RIKO STYLE」が持ち込んだ車両だ
■ストリート仕様とレース仕様の方向性が異なる2台が展示された
オートサロンでひときわ目立っていた2台のハチロク
今年も年明け早々に「東京オートサロン2025」が開催されました。来場者数は昨年比3万人増の26万人となり、実際に会場の賑わいや熱気もかなりなものでした。
展示車両のほうも数や気合いの入り方が昨年を上まわっている印象があり、見どころもたくさんありました。ここでは、その多くの展示車両のなかから、いまでも根強い人気を誇るトヨタの「AE86」にスポットを当てて、筆者が気になった1台を紹介します。
■黄金のボディカラーで仕上げられたカスタム「ハチロク」
ここで紹介したいのは、「RIKO STYLE」が出展している「AE86 STREET」と名付けられた車両です。なんといってもその金色に塗られたボディカラーが目に留まり興味を惹かれましたが、近くに寄ってみると、そのカスタムの内容がハチロクのセオリーに則りながら、さりげなく個性も主張していて、俄然気になってインタビューを敢行しました。
出展者を見付けて話を聞いてみると、このカスタムを行ったのは、北米のカリフォルニアで「RIKO STYLE」というカスタムユニットを主催するリチャード氏だということがわかりました。車両の印象からは日本のカスタムビルダーの作かと思っていたので意外でした。このリチャード氏、じつは本業は自動車関係ではなく住宅の設備関係だそうで、あくまでもこのカスタムユニットは趣味の延長とのこと。
しかし、趣味とはいいながらも、北米のカスタムシーンでもっとも支持されているイベントのひとつ「モントレー・カーウイーク」に「RWB」仕様のポルシェ993を出展して注目を集めるなど、その界隈では有力カスタムビルダーとして密かに注目度を高めていたりするようです。車両作りの根底には“レーシング・スタイル”というコンセプトがあって、スパルタンな見た目に見合うポテンシャルを備えることにこだわりがあるとのこと。
ちなみにリチャード氏が製作する車両はすべて金色に仕上げられています。このAE86のカラー名は「AGED INCA GOLD 1978」となっていて、直訳すると「熟成されたインカの黄金1978年版」となり、栄華を極めたインカ帝国の出土品のイメージのようですが、この金色の本当の設定は、日本を代表するあの遊郭のイメージなんだそうです。実際、先述のポルシェ993のサイドシル部には「YOSHIWARA」のレタリングが配されています。
■「ハチロク」のマニアが見ても注目点の多い仕上がり
では「AE86 STREET」を見ていきましょう。
ベースは、トヨタの「カローラ GT-S」です。北米仕様のレフトハンドルの「AE86」ですが、ここでハチロクのマニアなら気付いた人もいるでしょう、「カローラ GT-S」にはレビン/トレノという設定がなく、顔がリトラクタブルのトレノで、テールがレビンとなっています。ボディタイプは3ドアハッチバックになります。なので、この展示車両は、日本ローカルの“JDM”を意識してフロントまわりをレビン仕様に変更してあります。
エンジンはスワップではなく、オリジナルの「4A-G」をベースにしたチューニング仕様です。ストリートVer.ということで、エンジン本体には大きく変更を加えない方向で仕上げられています。
腰下は基本的に純正部品が使われ、ヘッドが東名ポンカムとHKSビッグバルブなどを使った“快速”仕様です。カムカバーには「リコスタイル」と立体で刻まれています。これはワンオフの特注鋳造品でしょう。エンジン関係は現地のチューニング店「CM Autohaus」で組まれているとのこと。
これに、吸気音の気もちよさを狙ってソレックスの44φキャブレターを装着、アメリカではヘッダースと呼ぶタコ足は「MERTELLUS」製のものを装着し、マフラーは金属加工を得意としている「WINTER SPEED SHOP」によるワンオフ品だそうです。
さらに特徴的なのはドライサンプ方式になっている点です。左ヘッドライトの裏に特徴的なオイルタンクが装着されていて、これがエンジンルームの雰囲気をレーシーにしています。
また、日本でも定番になりつつあるワイヤータックやシェイブドベイなどのエンジンルームをシンプルに見せる手法は当たり前のように施されていて、ボンネットの開閉用ダンパーを装着している点など、各所に北米のスタイルが感じられます。
■内装は妥協なくレーシングスタイルに
ストリートVer.といえど、運転するときに常に目に入る内装の仕上げは、とことんレーシーに仕上げられています。いちどすべての部品を取り払ったドンガラ状態にして、そこにGTマシンさながらの本格的なロールケージを装着。
ダッシュボードは撤去され、センターのパネルに計器やスイッチ類を集中させています。ペダルはまさに競技用のものに換装する一方で、ステアリングとシフトノブは日本の旧車系当時ものパーツに造詣の深い「水野ワークス」製を装着し、旧車らしさの表現にもこだわっています。
■足まわりも抜かりない仕上がり
ハチロクのストリート・カスタムでは“シャコタン(車高短)”は欠かせませんので、車高調整式ダンパーの装着は必須です。この車両には「ANNEX SUSPENSION FASTROAD PRO」というユニットが前後に装着されています。
また、ハチロクを競技用に仕上げる方法の定番だった、リヤの足の動きを向上させる“等長リンク”化も施されていて、押さえどころがわかってるなという印象を受けます。ブレーキも「Willwood」製キャリパーを使ったキットによって強化されています。
■ホイールは左右で色を変えている
外観の重要なポイントになるホイールは、当時からロングランの人気を誇る「ロンシャン(コーリンプロジェクト)」の14インチをチョイス。
車体をぐるっと見まわさないと気付けませんが、ホイールのリム部の色を左右で変えているのがポイントです。右サイドはアルミポリッシュで、左サイドはブラックになっています。これにより、左右で印象が違います。