そういや「メタバース」ってどこいった? 数年前に自動車業界でも注目された「仮想空間」の顛末

この記事をまとめると

■日本でも2021〜2022年頃に流行した「メタバース」は自動車産業でも注目された

■日産自動車はメタバース上でアバターによる乗車体験などを提供していた

■いまでも開発現場では各種検証を効率的に行うために「SDV」と呼ばれて活用されている

新型コロナの影響で流行ったメタバースという「仮想空間」

 そういえば、自動車がらみでもメタバースが注目されていたが……。最近はどうなったのだろうか。

 メタは、世のなかを俯瞰する視点といった、高い次元という意味がある。そんなメタとユニバースを融合させた造語が、メタバースだといわれている。

 メタバースという言葉が日本で流行ったのは、2021年から2022年ごろ。

 諸説あるが、もっとも大きな影響を与えたのは、アメリカIT大手のFacebook(現:Meta)だ。それ以前からもメタバースという概念はあったものの、商業ベースにのせたのが、当時のFacebookということになる。

 そんなメタバースを自動車産業界でも活用しようという動きが出た。2021年から2022年といえば、コロナ禍であり、自動車産業界に限らずオンライン会議によるリモートワークが当たり前になった。こうした働き方次第が、いわば仮想空間ともいえるだろう。

 仮想空間といえば、メタバースという括りとする前から、仮想空間を技術的に表現する手段としてはVR(バーチャルリアリティ)やAR(アグメンティッド・リアリティ)など、仮想現実が一般化していた。

 自動車分野では、ゴーグルタイプ機器を装着して、自分が運転席や後席にいて世界の観光地巡りをする、といったエンターテイメントがモーターショーや技術展示会などで披露されることが多かった。

 だが、そんなブームもすっかり下火になった印象がある。

 また、自動車開発の領域では、デザインや車両設計に関してVRやARを活用する事例もあり、一部では継続的に活用されているようだが、VRやARが主体になっているかというと、そうでもないようだ。

 そのほか、アバターという発想もあった。日産などは、自分の分身であるアバターを使って乗車体験を行うデモンストレーションを行っていたが、最近ではそうした光景を見る機会はなくなっている。

 一方で、自動車産業界の次世代技術に関するキーワードとして注目が集まっているのが、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)だ。直訳すれば、ソフトウェアが定義するクルマだが、そもそもSDV自体には定義がないため、企業や人によってSDVをどの領域でどう使うかの解釈にはかなりの違いがある。

 そんなSDVについては、自動車開発や各種の検証を効率的に行う、デジタルツインという考え方が広まっているところだ。

 このように、自動車産業界におけるさまざまなIT系新技術に対して、その実用化や今後の発展に向けた企業や社会の変化を広い視点で見ることが、メタバースの本質なのかもしれない。

 いずれにしても、競争が激しいIT業界においては、今後も世界各地からさまざまな提案が出てくることだろう。


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桃田健史 MOMOTA KENJI

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