座れない椅子がナゼ必要? 激狭なんてレベルじゃないほど狭いスポーツカーのリヤシートの意味とは (2/2ページ)

シートとしての快適性はほぼ皆無だが実用性が光る

 そのほか、輸入車ではポルシェ911を筆頭に、ロータス・エヴォーラ、アウディTT、プジョーRCZなどが4シーターのスポーツカーとして存在した。

 かつて初代アウディTT、プジョーRCZ、レクサスSCを試乗のために借り出して自宅に停めていたら、近所の小学生兄弟が「カッコいい、乗ってみたい」というので、親御さんの許可を得て後席に乗せたのだが、小学校低学年の弟くんはどちらの後席にも無理なく座れたものの、比較的長身の小学校高学年のお兄ちゃんのほうだとけっこうキツキツに座っていたと記憶する。

 つまり、4シーターのスポーツカーの後席は、無理なく座らせるには小学校低学年まで、あるいは身長150cmぐらいまでの人を座らせるのに適しているということ。それでも乗降性が厳しいだけでなく、体と足元の自由はきかず、前方の見通しにも期待できないため、閉じ込められた着座感になるはずだ。

 そもそも4シータースポーツカーのリヤシートは緊急用シートとして存在するわけで、着座感、乗り心地、エンジンノイズやロードノイズを含む静粛性、快適性など考えられているはずもなく、座れたとしても長時間の着座は御免なシートなのだ。

 ただし、ポルシェ911であれば、後席にひとり乗車という条件なら、大人でもドライブに出かけられないでもない。長年作り続けているだけに、スポーツカーの後席としては意外なほど実用的でもある。知り合いの911乗りは、家族3人でドライブに出かける機会もあるというが、911に乗りかえてからというもの、宿泊を伴うドライブ旅行ではミニマムな荷物で出かけることを心がけているそうだ。

 最後になるが、4シーターのスポーツカーに後席部分の実用性を期待するなら、荷物置きとしての使い勝手を重視するといい。具体的には、後席を倒してフラットに畳めるか否か、である。凸凹した座面長の短い後席のまま荷物を乗せるより、はるかに使いやすいからである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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