最近は技術の進歩で「いいとこ取り」のクルマも増えた
古い話になるが、1998年に軽自動車がいまの規格に変わったとき、全幅が1400mmから1480mmに広がった。ボディがワイドになるので最小回転半径も大きくなると予想したユーザーは多かったが、実際には幅広の新規格のほうがフロントタイヤの切れ角を大きくすることができたことで、最小回転半径が小さくなるケースも少なくなかったという事実がある。
もちろん、ワイドトレッド化によるメリットは、ボディサイズやタイヤサイズが同等であった場合という条件付きの話であって、全幅2.0mのクルマのほうが1.7mのクルマよりトレッドが広いので小まわりが利く……と理解してしまうのはミスリードだ。
まとめると、ホイールベースが長く、トレッドが幅広いディメンションのクルマは、直進時もコーナリング時も安定性を感じやすい素性であると想像できる。
ただし、曲がりやすさにおいてはホイールベースが短いほうが有利な面もある。古典的なスポーツカーがショートホイールベースとワイドトレッドの組み合わせとなりがちなのは、コーナリング性能を重視した結果と理解できる。
もっとも、現在では、可変サスペンションや4WS(四輪操舵)など、さまざまな電子制御テクノロジーによって、ホイールベースやトレッドという物理的な特性を超えた走り味を実現することも難しくなくなっている。
曲がりやすいショートホイールベースとしながら、電子制御で直進安定性を確保するといったアプローチをしているスポーツカーも珍しくない。小まわり性能についても4WSを採用することでロングホイールベースながら最小回転半径を小さくしているモデルもあったりするほどだ。
そのため、ホイールベースやトレッドのスペックだけでスポーツ性能については判断しづらかったりするが、基本的な特性を知る参考スペックにはなるもので、クルマ選びでは参考にしたい重要な数値であることは間違いない。