リアルすぎず浮世離れしていない絶妙なクルマ選びが難しい
アメリカの4大ネットワークのひとつで放映されている刑事アクションドラマでは、登場してくる刑事の乗る覆面捜査車両はすべて、ステランティスグループ傘下のクライスラー系ブランド(ジープとダッジ)となっている。
1980年代に起こった日米貿易摩擦のころには、ドラマ内で使用する家電に至るまで日本製の仕様は自粛されていた。仮に日本ブランドのテレビを使ったとしても、ブランドロゴ部分に黒いテープなどが貼られていた。そのころの名残りがいまも残っているのか、現在でも日本車がメインで活躍するアメリカのドラマや映画はそれほど多くない印象がある(ワイルドスピードのような日本車だらけの作品もあるが)。
自国ブランドがあるなか、警察の公用車となるのだから、アメリカンブランド車であるのは当たり前ともいえる。しかし、前出のドラマでは、刑事のプライベート車両でトヨタやレクサスブランドのクルマが登場してくる。また、街なかでの尾行やカーチェイスシーンでは、当該車両の周辺を走っている車両のなかに必ずといっていいほど、韓国系ブランドの新車が映りこんでおり、この点はなんらかの意図的なようなものを感じている。
日本だけではないが、海外ドラマでも最近では、最新車両ではドラマが「生臭く」なってしまうのか、旧車を使うパターンも増えてきている。
筆者は国内外を問わず、現代劇ならばドラマでも映画でもストーリーより、登場してくるクルマがどんなものであるかをチェックしている。クルマならなんでもいいと考えているドラマもあれば、きちっとリアリティを追求したり、ストーリーを盛り上げる小道具として客観的な理由で選び抜いているドラマは、やはりほか部分の作り込みも丁寧で面白いものが多いと筆者は感じている。
ただ、いまの日本でよく売れている新車といえば、軽自動車、ミニバン、そして比較的コンパクトなSUVと、かなり偏っている。輸入車でいえばドイツ系の比重がかなり高い。リアルに劇中車を選ぼうとすると生活臭が強いし、輸入車だと選択肢は限られてしまう。絵面も考えてドイツ系以外の輸入車が頻繁に出てくれば浮世離れしてしまう可能性もある。「それならばいっそのこと」ということで、見栄えのいい過去のモデルに主役を乗せるという流れになっているのかもしれない。
日本のあるドラマを見ていると、室内小物として家庭用ワインクーラーが中国系メーカー製で、そのままブランドも隠さずに放映されていて驚いたことがある。冷蔵庫や洗濯機などメイン製品ではない、「ニッチ製品」では、日本メーカー製が存在しないということもあるのかもしれないが、ほかでも中国系家電ブランド名を隠さず製品が使われていたのも見かけたことがある。
すでに細かい工業製品では、「日本メーカー製がない」という物も多くなっているので、その点では仕方がないのかもしれないが、長い目でみると、さまざまな理由から「なぜ日本のドラマなのに、ドラマに出てくるクルマはアジア系(主に中国や韓国)ブランドばかりなのだ」と、SNSなどで大炎上してしまう日が来るのではというのは、くれぐれも筆者の考えすぎであってほしい。