反EVのトランプとテスラのイーロン・マスクって水と油じゃないの? それでもトランプ政権でイーロン・マスクが要職に就くワケ (2/2ページ)

イーロン・マスクの狙いは宇宙にあり!?

 そもそもEV失速という認識がミスリードであろう。たしかに北米市場については、EV販売の伸び率は小さくなっているのでEVは「オワコン」のように思えるが、じつは全体としての販売台数は増えている。

 減速でも停止でもなく、あくまで失速(ペースダウン)でしかないともいえる。逆にいうと、他ブランドの伸びにより減速しているのはテスラだったりする。EV優遇策が撤廃されることで他ブランドが悪影響を受けることは、逆にテスラには追い風となるかもしれない。

 むしろ、次なるテーマとしてマーケットは「自動運転」にフォーカスしている部分もある。ご存じのように自動運転の普及においては、保険制度を含めた法律関係や自動運転に合わせたインフラの整備などがポイントになってくる。そうした領域において、テスラにとって好ましい方向に進むように政策に関与できることは、テスラの将来性につながるだろう。

 うがった見方をすれば、トランプ政権がエンジン車の復権に力を入れることで、GMやフォードといった伝統的な自動車メーカーがEVからエンジン車へリソースを割くことになれば、EV開発は鈍化するわけで、EVカテゴリーにおけるテスラの地位は安泰という近未来も想像できそうだ。

 もっとも、筆者の個人的な想像としては、イーロン・マスク氏にとってテスラにとって有利な政策を実現するというのはプライオリティが低いであろうと感じている。よく知られているように、イーロン・マスク氏の究極的な夢は火星移住であり、革新的なロケットを開発しているスペースXこそが、イーロン・マスク氏がもっとも注力している事業という見方もある。

 勝手な想像だが、NASAのコストダウンとして、知見や技術の一部を民間に移転するという建前で、スペースXのパフォーマンスをアップさせることが本丸で、そのために政権に入り込んだのかもしれない。イーロン・マスク=テスラとだけ捉えるだけでは見えてこない部分もあるといえそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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