カーシェアが新車を買うきっかけになる可能性
街なかのカーシェアリングステーションを見てもらえばわかるとおり、カーシェアリングで使用される車両はコンパクトハッチバックがメインとなるが、クロスオーバーSUVやミニバンなどその車種は多彩となり、しかも頻繁に入れ替えが行われ現行型(新車として販売されている車種)がメインのように筆者の目には映る。
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新型コロナウイルスの感染拡大が起こるまで世間では、「シェアリング」というものがクルマ以外でも注目されていた。カーシェアリングもそのなか、「自分でクルマをもつほど利用はしない」といった人が注目した。駅前などのレンタカーの営業所に行くよりは、近所のコインパーキングへ行けば利用できるといった手軽さも好評として会員が増えていった。
このようななかで、「新車を買わないでクルマをシェアリングするサービスの普及は、新車販売に悪影響を与える」といった話もよく聞いた。
しかし、筆者が聞いた限りでは、「新たな新車の販売促進方法」として、メーカーや新車販売ディーラーが見ている側面があるようだ。最初は「それほどクルマの使用頻度が多いわけではない」としてカーシェアリングの会員となりサービス利用をはじめたとしても、若いカップルで結婚後子どもができたりするとクルマの利用頻度が増していくし、チャイルドシートなど常備する用品も多くなる。また、あくまでシェアリングするので、必ずしも利用した時間にクルマが空いているとも限らないという心配も残る(サービス車両の台数などでもちろん事業者も調整している)。
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つまり、もともとクルマを所有するつもりがなかった人がカーシェアリングを利用することになり、さらに利用頻度が増えて「クルマを買うか」という購買行動が期待できるのである。また、現行型車が多いと前述したが新車購入を前提として乗り比べたりする人もいるなど、そのサービス利用も会員数の増加とともに多岐に渡ってきているものと考えている。
少子高齢化だけではなく、若年層では運転免許をもっていても(そもそももっていない人も多いようだが)、とくに都市部では「コスパ」のよくないクルマの所有を積極的に考える人は少ない。そのなか、昭和臭さも強いいまの新車ディーラーは、とくに若い世代にとってはいろいろな意味で敷居が高い存在でもある。なので、新たな販売促進のチャンネルとしてカーシェアリングを捉えているのである。
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自動車大国のアメリカでは、とにかく運転免許をもちマイカーをもたないと、日常生活での移動制限がかなり大きくなる(路線バスはあったとしても時刻表もないのでいつくるかわからないし車内は危険)。しかし、そんなアメリカでもとくにクルマ社会といわれる南カリフォルニアでも、カーシェアリングサービスが登場しクルマをもたないという人も出てきた。
そしてその後、ライドシェアサービスの登場でマイカーがなくとも移動に不自由することが減り、若い世代では運転免許すらもたない世代が出てきている。日本でもクルマが日常生活で欠かせない移動手段となっている地方部でも、すでに若い世代で運転免許をもっていないという人も目立ちはじめている。運転免許をもちクルマをもっている友人や知人を、表現はあまりよくないが、ライドシェアのようにうまく使っているようなのである。
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かつてのように「18歳になるのを待って運転免許を取り、社会人になったら自分のクルマを買うのが当たり前」という時代ではなくなっている。運転免許取得率が若い世代ほど落ち込んでいる現状だが、運転免許を取得したとしても、保険や税金、さらにはガソリン代や月極駐車場代などクルマの維持管理コストはかなり高い。
「まずはクルマを日々の生活で利用してもらう」ことからはじめ、「コストはかかるけどあったほうがいいな」と思わせる、そんな販売促進ツールとしてカーシェアリングサービスを考えれば、使われる車両も積極的に新車(しかもメーカーも多種多彩なことが多い)が使われているのも納得してしまう。