この記事をまとめると
■初代ポルシェ911をスワンボートにしたデジタルアート作品がある
■スコットランド在住のクリス・ラブロイはCG作品を996型911で実際に再現してみせた
■クリス・ラブロイ氏は実際にポルシェを所有する根っからのポルシェフリークだ
これまでに見た911アート作品のなかでも突出したセンス
いまや貴重品となったナロー911がファンシーなスワンボートにされ、プールには何台もの空冷911が浮かび、挙句の果てにはヤシの木の上に993が引っ張り上げられたというアート作品。たしかに、昔からポルシェ911はアートの素材に選ばれてきましたが、ここまで奇妙なテイストはお目にかかったことがありません。展示の際にはご丁寧にも卵の殻まで用意され、ポルシェ好きでなくとも目を丸くすることしきり! これら驚きのポルシェアートは、スコットランドの田舎に住むデジタルアーティストがこねくりまわした作品なのです。
ナロー911のボディ下半分を空気で膨らますフロートにして、フロントスクリーンからはこれまたプールで遊べる白鳥の頭がにょっきり生えている! ミッドセンチュリーな住宅のプールサイドにたたずむ様は、しっくりしているようでどこかファンタジック。はたまた、同じく西海岸の陽射しが明るいプールには、メキシコブルーも鮮やかな911がきれいに並んで浮かんでいるというシーンも二度見したくなるような光景に違いありません。
これらのデジタルアートは、スコットランドのアバディーンという片田舎に住むアーティスト、クリス・ラブロイのCG作品。ともあれ、ぱっと見では区別がつかないリアルさには誰もが目を疑うに違いありません。さらに、CGだけでは飽き足らないとばかりに、ラブロイは996の実車を使ったリアルなスワンボートまで制作しています。
996スワンボートは、ポルシェが主催したゴルフ大会でオブジェとして展示され、この際はボディカラーに合わせてスワン誕生の卵までデモンストレーション! フロートを仕込むためにタイヤハウスが大きく切り開かれ、またフロントスクリーンもCG同様にガラスレス。もしかしたら、このままプールにも浮かぶのではないかと思えるほどの出来栄えです。
アートスクールでプロダクトデザインを学んだというラブロイは、CGアートに取り組む前はブリティッシュ・エアウェイズやナイキ、アップルといった世界的企業でデザインの腕を振るったとのこと。ですが、そもそもはイギリスの有名なクルマ番組「トップギア」の大ファンで、幼いころからクルマ好きであり、カーデザイナーを夢見たこともあったとか。とりわけ、ポルシェのデザインには興味があったようで、デジタルアートの腕を磨きながらたくさんの911アートを制作していたのだそうです。
また、作品の舞台は前述のアメリカ西海岸、ミッドセンチュリー住宅、はたまたカリフォルニアの荒涼とした砂漠地帯など、およそスコットランドとはかけ離れたエリアというのも大きな特徴です。これは、「911が映えるステージ」として、彼の想像力が世界中を旅した結果なのだとか。ちなみに、911スワンボートやプールは彼にとって「幸福」を象徴するものであり、芸術作品に欠かせない要素だとしています。
そんなクリスですが、じつはれっきとしたポルシェのオーナー。1台目は981ケイマンを手に入れ、現在はケイマンGT4に乗っているとのこと。「自宅で仕事をするので、ケイマンは通勤手段ではなく、純然と走りを楽しむために乗っています。アバディーンに住んでいてよかったと思うのは、ポルシェを存分に走らせる環境に恵まれていること」とコメントしています。
毎日、ポルシェをぶっ飛ばしているアーティストだからこそ、ファンタジックでどこか郷愁を誘う作風になるのでしょうか。突飛なアイデアながら、クルマ好きならではのセンスと品性を感じずにはいられません。