古いイメージがあるがいまでも使われている
■ラジアルタイヤとの違いは?
ここで気になるのがラジアルタイヤとの違いの部分だと思います。
簡単にいってしまうと、カーカスの繊維の向きが、斜めから直角になったという点がもっとも大きな違いです。
「同じ直角に交差させるのだから、45度変えたぐらいでそんなに大きな違いは生まれないのでは?」という疑問もあるでしょう。
しかし、力の方向を考えると、斜めに交差させるバイアスタイヤの場合は直交する繊維でできる網目の四角形が、ゆがんで変形しやすいという特性があるので、ある程度以上の荷重がかかると変形して腰砕けが起きてしまいます。
バイアスタイヤはブレーキのスキール音(キキーッという音)が大きいといわれるのはこの変形する特性のためです。
その特性のために、いまでもバイアスタイヤのほうが変形が大きいぶん、乗り心地の点では優れているという声も多いのですが、クルマの性能が上がっていくのに伴ってタイヤにもその増していく荷重に耐える性能が求められるようになったため、より高い荷重に耐えられる構造のラジアルタイヤに取って代わられてしまったというわけです。
ちなみにラジアルタイヤは高い荷重に耐えられる基本構造ということに加えて、耐荷重の要といえるカーカスやベルトに、ナイロンよりもはるかに強いポリエステルやケブラー、アラミドという高性能な繊維の実用化によって、さらに高い性能を獲得しています。
■いまでも現役でバイアスタイヤが使われているシーン
そんな絶滅危惧種のバイアスタイヤですが、まだ一部の用途では現役で活用されています。その代表的な例はオフロードや農業など、柔らかい地面の上で使われるクルマのタイヤです。
硬いアスファルトでスピードを出す場合は剛性の高いラジアルタイヤの独壇場ですが、地面が柔らかい土や砂などの場合、逆にバイアスタイヤの変形する特性が効果を発揮します。
また、かなり特殊な例ですが、アメリカでおこなわれているドラッグレースのタイヤにもバイアスタイヤが多く使われています。
トップカテゴリーでは400mを4秒台で駆け抜けるという異次元のパフォーマンスを見せるマシンで戦われる競技ですが、その走りにはバイアスタイヤが適しているようです。
ドラッグレースではタイヤのスリップがそのままタイムロスになるため、極限のグリップ性能が求められます。つまりタイヤが路面に吸い付くようにまとわりつく働きが必要で、それにはバイアスの変形する特性がベストとなるのです。
そのほかにも2輪のレースなど、バイアスタイヤで検索すると意外な用途が見つかりますので、気になった人は調べてみてください。