この記事をまとめると
■1970年代までは「バイアスタイヤ」が主流だった
■ラジアルタイヤとのもっとも大きな違いはカーカスの繊維の向きだ
■現在バイアスタイヤは農業用やドラッグレースの場で使用されている
バイアスタイヤってなんだ?
タイヤの歴史を振り返ると、1970年代に高性能タイヤとして新たに「ラジアルタイヤ」が登場して、一気にタイヤの勢力図を塗り替えていきました。
それ以前に主流だったのが「バイアスタイヤ」です。
「バイアス」と聞くと、いまでは「バイアスがかかってる」という感じで、「何らかの影響を受けて偏った考えに傾いている」とか「思い込みにとらわれている」という意味合いで使われることが多いでしょう。
ここではその「バイアスタイヤ」に注目して、少し掘り下げてみようと思います。
■バイアスタイヤとは?
「バイアスタイヤ」とは、タイヤの基本構成の1種類です。「バイアス」とは英語で「Bias」と書き、「斜め、傾き」という基本的な意味のほか、「布目が斜めになるように切られた生地」や「偏った」、「ゆがんだ」などの意味があるようです。「バイアスタイヤ」の場合は「布目が斜めになるように切られた生地」が近いでしょう。
・バイアスタイヤの成り立ち
さて、この「バイアスタイヤ」を説明するには、まず簡単にタイヤの基本構造を知っておいたほうがいいでしょう。
自動車用のタイヤは、その車重と乗員+荷物の重さを支えつつ、走るときの駆動力や制動時の大きな力も受け止める強度や剛性が求められます。
その性能を確保するにはただのゴムのリングだけでは困難です。
まず荷重を支えるためには潰れないように形を保持する強度が必要ですが、ゴムのかたまりでは乗り心地が壊滅的になってしまいます。そこで空気のクッション性を活用する中空構造が考えられましたが、ゴムだけでは、荷重を支えられるだけの空気圧を注入すると膨らんだ末に破裂してしまいます。そして、ゴムのチューブが一定以上に膨らまないように、それを締め上げる伸びない繊維のベルトで補強するアイディアが生まれました。
それを改良してまず実用化されたのがバイアスタイヤです。
・バイアスタイヤの構造
バイアスタイヤがバイアスと呼ばれるのは、その膨らまないように締め上げる繊維のベルト(=カーカス)が、繊維の整列する方向が直角に交差するように2枚重ねられて配置されていることからです。
タイヤを真っ直ぐ立てたときに、接地面を真っ直ぐ見て45度の角度になるように繊維が並んだカーカスというベルトが巻かれ、その上に繊維の方向が90度の角度で交差するように同じカーカスを巻くのが「バイアスタイヤ」の基本骨格です。
そしてその2枚のカーカスの上に、膨張を抑えて接地面の剛性を確保する肉厚のブレーカーと呼ばれるベルトが回転方向に巻かれます。
ちなみにカーカスとブレーカーに使われる伸び難い繊維にはナイロンが使われることが多いようです。
これらの構造によって、荷重を支えるエア圧に耐えつつ、クルマの加速や制動に対する力を受け止める性能が確保できるようになりました。
ちなみにバイアスタイヤはサイズの表記の最後に「4PR」という文字列が付くのも特徴です。この「PR=プライ」という表記で、カーカスを重ねた枚数を表しています。高くなるタイヤへの性能向上の要求に対して、カーカスを重ねることで対応していたというわけです。
バイアスタイヤが実用化された時期はハッキリとしたデータが見つかりませんでしたが、ラジアルタイヤが普及する1970年代までは実用タイヤの主力としてクルマの足もとを支え続けていたのは確かです。