会社はやっぱり人! 年収アップに定年廃止まで盛り込まれた「ホンダ」の「人事施策」に明るい未来をみた (2/2ページ)

部長職の年収200万〜300万円アップを目指す

 貝原副社長の決意表明を受け、今後の具体的な施策を発表してくれたのが、安田啓一人事統括部長だった。大綱としては「個の違いを認め合い、尊重する企業風土」「大胆かつ柔軟な人材採用と育成」「主体性の尊重と実力主義の徹底」という3つの施策を行う。

「個の違いを認め合い、尊重する企業風土」では、多用な働き方として選択定年制と一部従業員の定年制度廃止、フレックスタイム制とリモートワーク、有給休暇の100%取得、短日数勤務・短時間勤務制度、休職制度・帯同転勤制度などを実施。また、企業風土改革として、変革期における行動要件「Honda 6 ACTIONS for Change」を明示し、それぞれの現場であるべき姿に近づくための取り組みを組織開発的にボトムアップで実行する「企業風土改革プログラム」を開始する。

「大胆かつ柔軟な人材採用と育成」では、人材採用として国内の採用だけでなく、注力領域での採用強化と海外から日本への採用を強化する。育成としては、注力領域(ソフトウェア・電動化)のリテラシー向上と従業員の自律的な学びの支援、グローバル人材育成、新価値探索プログラム「MINERVA」に注力していく。

「主体性の尊重と実力主義の徹底」では、役職者の給与・評価制度の改定、高度専門人材の処遇、Gen-AIエキスパート制度の導入などを実施。なかでも注目すべきは、役職者の給与・評価制度の改定で、部長職を例にすると、これまでの年収から200万〜300万円の年収アップを実現していく予定だそう。

 発表会を通して、貝原副社長は「ホンダにはこれまでに築き上げてきた失敗しないシステムができあがっている。これに基づいて動いていれば失敗はしないけれど、まったく新しいものには対応することができない。ホンダが総合モビリティカンパニーとして進化するためには、経営側がしかけて変えていかなければならない」と力強く語った。

 このタイミングで発表されたホンダの「人間尊重のフィロソフィーに基づく人事の取り組み」。それはこの先、例え経営統合することがあってもなくても、ホンダはホンダの進むべき道を見据え、それに向かって邁進していくことの宣言に感じたのは考えすぎだろうか。

 いずれにしても、今後のクルマ業界では、半導体やAIの領域で高い知見を持った人材の奪い合いが激しくなることは必至。ホンダは人事に関する自社の哲学を公開することで、これに賛同する優秀な人材の確保を目指す。AIや電動化などといっても、最後はやはり「人」こそが企業の財産なのだ。これまでもホンダは「人」が未来を切り開いてきた。そんなホンダにこれからも期待したい。


新着情報