この「力こぶ」を見たら道を譲れ! ボンネットがボコっと膨らんでる「パワーバルジ」ってそもそもなに? (2/2ページ)

モデルによってまったく異なる膨らみのカタチ

■パワーバルジのあるクルマの代表例

ダッジ・チャレンジャーT/A

 まず前述のマッスルカーでは、発祥の一角であるだけに多くの例がありますが、個人的には「ダッジ・チャレンジャーT/A」が印象的な一台です。

 このクルマは1970年に発売されたチャレンジャーの特別モデル。末尾の「T/A」は「トランス・アメリカ(アメリカ横断)」の略で、当時大流行した「トランザムレース」のホモロゲーション獲得用のモデルということになります。

 レース向けに大口径キャブレターが3機装着されていて、そこにフレッシュなエアを導入するためにエンジンフードに大きなインテークダクトが設けられています。

 これがひと目見て「T/Aだ!」と識別できるアイコンとなっていました。

ジャガー・Eタイプ

 英国を代表するスポーツクーペといえばこの「ジャガー・Eタイプ」を挙げる人も多いでしょう。そのEタイプの長いボンネットフードには、中央に流線型の膨らみが設けられていて、それがデザインのアクセントにもなっています。

 ちなみにのちのジャガーのクーペモデルたちにもこのバルジの意匠が受け継がれているようです。このバルジのなかにはジャガーの誇る大排気量4リッター直列6気筒エンジンのDOHCヘッドが収まっています。

 その高性能な心臓を美しく誇示する膨らみに憧れた人は少なくないでしょう。

日産フェアレディZ

 国産車でまず思い浮かべるのは「日産フェアレディZ(初代・S30型)」でしょうか。

 上記のジャガーEタイプを彷彿とさせるロングノーズ&ショートデッキなシルエットのボディに、直列6気筒エンジンを搭載する国産車を代表するスポーツカーの一台です。

 このフェアレディZもボンネット中央に西洋の剣の切っ先のような形状のパワーバルジが設けられています。

 これはコンパクトなボディサイズで流麗なデザインを考えた際、エンジンを搭載する段になってシリンダーヘッドが収まりきらないことが発覚。急遽バルジ形状で納めたという話が伝わっています。

 その経緯はともかく、いまではZのアイコンとして認知されていて、現行のRZ34型でも復活採用されています。

ホンダS800

 こちらも国産車を代表するスポーツカーの一角として名が挙げられる機会の多い「ホンダS800」。コンパクトなボディにオートバイ由来の技術が込められた高性能DOHC直列4気筒エンジンを搭載。

 そこに各気筒個別のキャブレターを備えるという点が特徴でしたが、S800のボンネットにある小さな膨らみはそのキャブレターを納めるためではなく、他のSシリーズと差別化するためだといわれています。フラッグシップとしてのアイコンがほしかったということでしょうか。

 余談ですが、このS800のパワーバルジからは1984年に発売された「CR-X Si」を連想してしまいます。こちらのパワーバルジはエンジンをDOHC化した際にカムスプロケットカバーの盛り上がりが収まりきらなかったためとのことで、本来の役割で設けられているそうです。

日産パルサー GTI-R

 少しだけ新しいところでは、「日産パルサー GTI-R」のグリル状インテーク付きバルジが印象的でした。

 このバルジのなかには、それこそ1980〜90年代にかけての高性能ターボエンジンの象徴といえる「インタークーラー」が収まっています。この上置きインタークーラーの元祖は「ホンダ・シティターボ」だという声も多いと思いますが、このオラオラ感すら感じる存在感は、パワーバルジ史上でもかなりのものだと思います。

 この当時はコンパクトハッチのボディに240馬力の強心臓を備え、四輪駆動でグイグイ加速するモンスター的パフォーマンスから、「ミラーでこのバルジを見たら道を譲れ」といわれていたほどでした。

 この「パワーバルジ」は、先述のRZ34フェアレディZをはじめ、シボレー・カマロなどの新生マッスルカーでもいまだに高性能の証として活用されているようです。

 これを機に「パワーバルジ」に注目してクルマを見てみると面白いかもしれません。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

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スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
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