「ジュニア」を冠するアルファロメオは時代ごとに存在した
「ジュニア」の名をもつアルファロメオはほかにも存在する。映画『卒業』でダスティン・ホフマンが駆った初代スパイダーのシリーズ1時代の1968年に1300ジュニアが、シリーズ2になってからの1972年には1600ジュニアが、ややシンプルなトリムをもって追加された。いずれもジュリア・クーペのジュニアと同じエンジンを搭載していた。
1969年に発表された初代ジュリアをベースにカロッツェリア・ザガートが独自のボディを与えたスペシャルモデルは、1300ジュニア・ザガートと名づけられ、1972年には1600ジュニア・ザガートに発展する。
ジュニアと名づけられたのは、基本コンポーネンツをジュリアのジュニアから流用してわずかにチューンしたモデルだから、ザガート製モデルの本流と異なりレースへの出場を目的としていなかったモデルだから、などいくつかの説がある。
アルファロメオのボトムレンジを支えてきたアルファスッド、145、146といったラインにもジュニアの名をもつモデルが用意された。比較的新しいところでは、ミト・ジュニア、ジュリエッタ・スプリント・ジュニアというモデルも存在した。
いずれもリーズナブルな価格設定とされ、ジュリア・クーペほどではなかったものの、シンプルな装備類ながらアルファロメオらしい走りという点では、上級グレードにまったく引けを取らない、というモデルだった。
2022年にジュリアとステルヴィオに設定された限定モデル、「GTジュニア」も、なかなか濃いモデルだった。4気筒モデルでもっともパフォーマンスの高いヴェローチェをベースに、アクティブサスと機械式LSDを標準装備として与えている。
装備を割愛することなく、シャシーを磨くことでアルファらしい走りの気もちよさをさらに高めたモデル、といえる。もっとも、このモデルはもともとの「ジュニア」としての性質を受け継いだというより、初代ジュリアのGT1300ジュニアへのオマージュ的な存在というべきスペシャルエディションだったのだけど。
新たに車名そのものがズバリ「ジュニア」となったモデルが誕生したことで、グレードとしての「ジュニア」が生み出されることは、この先、少なくともしばらくはないだろう。位置づけが変わって、これからはアルファロメオのボトムをしっかり支えるモデルの車名として機能していく、というわけだ。
そのボトムを支えるモデルの出来映えが素晴らしいのだから、歴史の流れが少し変わってもぜんぜんオッケ! と僕は思っている。
ああ、新世代のジュニアの上陸が本当に待ち遠しい。