乗ってよし使ってよしの実直な1台
使い勝手面での大きな特徴は、バックドアに注目したい。アッパーゲートとロアーゲートを備えた上下開閉式としている。また、グレードによっては、フロントグリルガード、背面スペアタイヤキャリア、ファッションレールや大型アウタースライドガラスサンルーフといった装備が標準となっていたのも魅力、商品力の高さに貢献していたといえるだろう。
ベージュ色を基本とした明るいインテリアではフロントにゆったりサイズで明るい新世代エルゴノミックシートを採用しており、シート地は明るいチェック柄としたほか、ダッシュボードに2段にわけて配置したツイングローブボックス、脱着式(!)の高輝度テレビもオプション設定されていた。
ラシーンを運転した記憶を辿れば、室内はリビング感覚かつ広々感あるもので、シートのかけ心地は文句なし。フロントウインドウの傾斜が39度と立ち気味で、サイドウインドウも垂直に近く、アップライトな着座とスクエアなボディ&ボンネット形状によって、運転のしやすさ、車両感覚のつかみやすさが印象的だった。
動力性能は、すべてのパワートレインにおいてフラットトルク重視の扱いやすさ、走りやすさ重視の設定。操縦性や乗り心地を含め、動的部分はごくフツーというイメージであり、それがラシーンの狙いでもある。
そんなラシーンはいまでも中古車市場で人気の高いクルマだが、筆者のまわりにも、最近までラシーンを愛用し続けていた人がいた。ある人は自動車カメラマンだが、話を聞くと、ラゲッジルームの使い勝手がなかなかだという。そこで当時のメモを引っ張り出すと、後席使用時で奥行き約650mm、最大幅1250mm、高さ750mmと、スクエアなボディゆえのゆとりあるスペースが確保されているのだ。
上部と下部が独立して開くバックドアは、下部を出せばベンチ代わりになるとともに、荷物を置くことも可能。アウトドアシーンはもちろん、カメラマンの機材車としても大活躍してくれることを改めて思い知らされた。
同時に、いま見ても「カッコいい」「これは使える」と思わせる、普遍的な見映えと魅力に溢れたライトクロカン、いや、ひと足早いクロスオーバーモデルといっていいかもしれない。
1994年から2000年までの6年間にわたって生産され、デビューから31年を経たラシーンはいまでも中古車市場には多数が存在。走行距離は10万kmオーバーで保証なしが基本ながら、その人気は根強く、価格は100万円超えが中心とプレミア気味な値づけになっている。
中古車情報サイトで調べたところ、2025年1月7日現在で、1997年式タイプII、走行距離2.7万km、車検整備、保証付きで車両本体価格が税込234万8000円というドラえもんブルーの個体も発見できた。ちなみに、ヘッドライトは現在の安全基準を満たした樹脂製ではなくガラス製なので、安全性はともかく、黄ばみなどはほぼなく保たれているはずだ。