この記事をまとめると
■日産ラシーンはコンセプトカーの大好評を受けて1994年にデビュー
■ドラえもんを採用した広告戦略やライトクロカンブームの影響でヒット
■個性的な見た目と高い実用性で現在でも人気が続く1台
パイクカーのテイストを取り入れていち早く登場したライトクロカン
いまでも中古車市場で人気があり、単一車種の専門店まである1990年代の一風変わった日産車の1台がラシーンだ。1993年の東京モーターショーにコンセプトカーとして出品された際に大きな話題を呼び、市販化の要望が高かったため、約1年後の1994年12月に発売。
1994年といえば5月にトヨタRAV4が登場し、乗用車ベースのライトクロカンブームに火がついた時期でもあり、まさに時代を読んだライトクロカンがラシーンだったのである。
しかも、イメージキャラクターに「ドラえもん」を採用。TVCMはもちろんカタログにも登場し、なんとボディカラーに「ドラえもんブルー」なる色もあったほど。ちなみに、ラシーンの名前の由来は「羅針盤」だ。
そんなラシーンを日産パイクカーシリーズの一員と誤解している人もいたはずだが、Be-1から始まったパイクカーシリーズは1980年代後半の話。ラシーンはそれと切り離された、パイクカー的なクルマと理解するのが正しい。
基本設計は7代目サニーや4代目パルサーのコンポーネントを流用してコストを抑えたクルマでもあり、デビュー当時の価格は157万〜219万円とリーズナブルなものであった。
スペックは、ボディサイズが全長4115×全幅1695×全高1515mm、ホイールベース2430mm、車重1210kg。搭載されるエンジンはGA15DE型1.5リッター直4DOHCで、そのアウトプットは105馬力/130Nm。10・15モード燃費は12.8km/Lであった。
トランスミッションは全グレードで5速MTと4速ATから選ぶことができ、駆動方式はライトクロカンというキャラクターから全車フルタイム4WDである。サスペンションはフロントがストラット、リヤがパラレルリンクストラット。タイヤは185/65R14サイズを履いていた。スペック面でのラシーンならではのポイントが最低地上高で、本格クロカンに迫る170mmとなっていた。
なお、1997年1月のマイナーチェンジでは新たに125馬力を発揮するSR18DE型1.8リッターエンジンを搭載。さらに1997年12月には、ボディサイズをわずかに拡大するとともに145馬力の2リッターエンジンを搭載し、丸目4灯のフロントマスクをあたえた「ラシーン フォルザ」も登場している。
当時の日産のニュースリリースには、「『ラシーン』はセダンの実用性を備えた、”新感覚のRV”であり、開発にあたっては”都市生活と自然にやさしく調和する4WDプライベートビークル”をコンセプトに、シンプルでナチュラルな直線基調のデザインを採用するとともに、コンパクトで扱いやすいボディサイズ、快適で機能的な室内空間、高い信頼性を備えたメカニズムなど、必要な性能をしっかり盛り込んだ」とある。