この記事をまとめると
■EVは充電設備の不足が世界的に問題視されている
■EVは再販価値が低く大ヒットした日産サクラもその渦中にある
■EVの再販価値の低さは世界的な課題となると予想される
EVは再販価値が低いのがデメリット
BEV(バッテリー電気自動車)がなかなか普及しないというのは、地域によって程度の差はあるものの、BEVの普及促進を図ろうとしている人たちの共通の悩みとなっている。
その背景のひとつとしてあるのが、やはり充電インフラが十分に整備されていないことだろう。2024年秋にアメリカでもとくにBEVの普及がめざましい南カリフォルニアへ出かけると、ショッピングモールや大型小売店の駐車場にはだいたい充電施設が用意されているのだが、それでも地域や時間帯によっては充電待ちの長い列ができていた。2024年12月に訪れたマレーシアでも、新車販売関係者から「いまの充電インフラの普及度合いではなかなかBEVは勧められない」という話を聞いた。
また、最近ではBEVの事故率の高さというものが海外では指摘されるようになっている。ICE(内燃機関)車から乗り換えたときに、そのパフォーマンスの違いに慣れないがゆえに事故が多発しているとの報道があるし、これもあくまで海外での話だが「車両火災も多いようだ」との声も聞く。
タイの保険会社では、BEV用の保険は保険とも呼べない高額な料金となっており、保険自体を請け負わないところも多いと聞く。BEVへの過渡期の事象ともいえるが、今後の行方が気になる話である。
そして、BEV購入の最大のリスクとされているものに、再販価値がよくないことがある。世のなかに本格的量産品といえるBEVが登場してまだ間もない。まだまだ性能進化の伸びしろがあり、その進化のスピードはかなり速い。となれば、中古BEVを好んで選ぶという人もそれほど多くはなく、ICE車に比べても再販価値の下落スピードが速くなるのである。
2023事業年度締め年間新車販売台数が3万4083台となり、2022事業年度締めに続いて2年連続で日本国内におけるBEV販売ナンバー1となっている日産サクラも、再販価値下落スピードの速さでは例外ではない。登場して間もないころに比べれば中古車流通台数が多くなるのだから、「需要と供給」の関係で中古車価格も下落していくのは当然の話なのだが、BEV購入に当たり補助金交付を受けると4年間は名義変更できない、つまり、保有義務というものが発生する。
平均中古車販売価格比となるので、デビュー時のサクラの3タイプあるなかの中間グレードの新車販売価格と比べると(X:239万9100円)、平均中古車販売価格は約71%となっている。新車時価格の7割程度というのは、初回車検到来前の時期で考えると、ICE車では一般的な相場ともいえるのだが、流通台数が増えた2024年秋から中古車販売価格も急に落ち込んでいる。