この記事をまとめると
■鉛酸バッテリーは12Vの補機用バッテリーやHV・EVに使用されている
■鉛酸バッテリーには電解液の保持の仕方で「AGM」と「GEL」のふたつの種類がある
■「AGM」は基本的に補機バッテリーとして、「GEL」はEVのような使われ方に向いている
バッテリーの性能を大きく左右する電解液の保持方法
12ボルト(V)の補器用として、鉛酸バッテリーは、エンジン車はもちろん、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)を含め、あらゆるクルマに使われ、その歴史も長い。
仕組みは、正負極の電極(鉛合金)と、希硫酸の電解液から成り立つ。それが、鉛酸という理由だ。希硫酸の電解液の保持の仕方によって、AGMとGELと呼ばれるふたつの方式がある。
AGMとは、Absorbed Glass Matt(アブソーブド・ガラス・マット)の頭文字で、ガラス繊維のマットに電解液が含まれているという意味だ。このため、たとえば横にしても液漏れの心配がなく、ドライバッテリー、密閉式バッテリー、メンテナンスフリーバッテリーなどと呼ばれるのは、この方式による。
GELとは、ゲル状などと一般的にも使われる言葉で、サラサラとした液体ではなく、粘着性のあるネバネバした様子をいう。このバッテリーは、電解液自体に混ぜ物をして、粘り気をもたせることで電極に、常により均等に電解液が接するように工夫したものである。
クルマで使われるのはどちらかといえばAGMバッテリーのほうで、とくにアイドリングストップをするエンジン車に適しているとされる。充電能力に優れ耐久性も高いので、アイドリングストップによってエンジンの再始動のため何度もスターターモーターを使っても、バッテリー上がりの心配やバッテリー寿命への懸念を減らすことができる。
一方、欠点としてはバッテリー価格が標準的な鉛酸バッテリーに比べ高額になる。このため、アイドリングストップをやめる自動車メーカーも出ている。
しかし、減税政策に適合できる燃費性能であるから、バッテリー交換時の費用を安くするとの発想は、すべての人に影響を及ぼす地球環境問題の解決に反するのではないか。また、新車の諸元性能で税制に適合しても、現実の利用において、とくに都市部では発進・停止の機会が増え、渋滞の可能性も高まるので、停車中にエンジンを停止する意味が高まる。
経費節約という顧客のためといいながら、商魂が見える。
GELバッテリーは、長時間電気を使い続けるようなディープサイクルと呼ばれる利用に適しているとされる。たとえば、電気自動車(EV)や、太陽光発電などでの蓄電のような使い方だ。市販EVはすでにリチウムイオンバッテリーが採用されるが、個人などでエンジン車をEVに改造する(EVコンバートという)場合などには、より適した選択となるだろう。
また、かつて高出力なオーディオを車載することが流行った時代がある。エンジン車でも大容量の高出力オーディオにより消費電力が大きくなる場合は、深い放電性能を備えた特性が好まれるかもしれない。
鉛酸バッテリーは長い歴史を持ち重宝されてきた。そのうえで、価格に幅を持つようになった背景に、より高性能を目指した技術の進化がある。