この記事をまとめると
■道路標識は光源の方向に向かって反射する再帰性反射の技術を採用している
■金属板に特殊なシートを貼ることでクルマを運転しているドライバーにのみ反射している
■さまざまな技術革新により円滑で安全な道路環境が守られている
再帰性反射が夜の道路標識を変えた
安全かつスムースな交通を実現するために必須といえるのが、さまざまな道路標識。守るべきルールであったり、道の先にある地名だったりを示すもので、ドライバーは常にチェックしていかなければならないのが標識だ。
そんな標識で不思議に感じるのは、夜間にものすごく明るく見えること。自動車を運転しているときに見る標識は、まるで「自ら発光しているのでは?」と思うくらいクリアに見える。一方、歩行者として見るとそこまで明るくなかったりする。
はたして、夜間に道路標識が「異常なまでに」明るく見えるのには、どんなテクノロジーが使われているのだろうか?
結論からいえば、その秘密は「再帰性反射」にある。
いわゆる通常の反射を「乱反射」と呼ぶが、これは当たった光があらゆる方向に拡散するという反射のタイプ。乱反射であれば、ヘッドライトで照らしたからといって浮かび上がるほど明るくは光らない。それでは道路標識には、ミラーのような光沢を与えているのかといえば、そうではない。光沢のある面に光を当てると「鏡面反射」といって、入射角と同じ角度で反射してしまう。鏡面反射においては光を当てた方向から見ると非常に暗く見えるはずなのだ。
そこで登場するのが「再帰性反射」だ。これは、入射した光が光源の方向に帰っていくという特殊な反射なのである。具体的に道路標識でいえば、ヘッドライトで標識を照らすと、その反射はヘッドライト(車両)のほうに向かっていく。
つまり、クルマのなかにいるドライバーに向かって反射していることになる。この仕組みにより、夜間の道路標識を非常に明るく視認できるようになっているのだ。逆に、光源から離れると明るくは見えない。クルマで走っているときはクリアに見える標識が、歩行しているときはさほど明るくないのは「再帰性反射」を使っているからなのである。
構造としては、金属板にペイントして製作した標識の表面に再帰性反射をする特殊なシートを貼るといったものになっている。そのシートは内部にプリズムをもつ多層タイプとなり、もちろん屋外での耐久性に優れたものが採用されているのはいうまでもない。
再帰性反射シートの大手メーカー、3Mの道路標識用反射シートのラインアップを見ると、ベーシックなタイプでも5年の屋外使用で初期性能の80%を保有するとされている。上級な反射シートになると10年間の屋外使用後でも初期性能の80%を保有とされ、さらに12年間の屋外使用後でも初期性能の50%以上の製法を保持するとされている。
自動車事故の危険度は夜間になると増す。なにしろ夜間の死亡事故率は昼間の約3倍となっているというほどだ。それほどリスクの増す夜間だが、こうした技術革新によって、円滑で安全な道路環境が守られていることは、スマートドライバーであれば覚えておきたいものだ。