現代のスカイラインに「ケンメリ」のエッセンスを注入
新世代のクルマ好きが想う新しいスカイラインの姿「NEO Skyline」
旧車を知る世代の人なら、パッと見て「ケンメリだ!」と連想するであろうこの車両は、そのケンメリから7世代もあとになる「R35型スカイライン・クーペ」をベースに作られています。製作したのは「Z Lealia」と同じ「日産京都自動車大学校」の4年生です。
「ケンメリ・スカイライン」とは、1972年に発売された「C110型 スカイライン」の愛称で、スカイラインとしては4代目にあたります。この「NEO Skyline」は、その旧い「ケンメリ」をオマージュしながら、「すべてのスカイラインに敬意を表して、あたらしい魂を込めたい」というテーマで製作されました。
製作のきっかけは、メンバーのひとりが「新しいスカイラインを提案するならこんな感じにしたい」と差し出したスケッチからだったそうです。それをもとにしてメンバー全員でアイディアを練るうえで、ケンメリのスタイリングをベースにすることに固まっていったのだとか。
ベース車の35スカイラインは、いまとなっては旧い存在ですが、ケンメリとの間には30年の時間が横たわっているため、サイズをはじめ、デザインやシャシーなどまるで違うクルマです。先に紹介した「Z Lealia」のように外装パーツの移植ではどうにもならないと判断して、フォルムは新たに造形し直すことにしました。
35スカイラインの外装をすべて取り去ったうえで、木のパネルやウレタンフォームなどを使って大まかな形状をつくり、徐々にケンメリのイメージに近づけていったそうです。そのため、外装パネルはほぼFRPで製作されています。
外装のポイントはいくつかありますが、まずクルマの印象を決定するフロントには効果的にケンメリのアイコンをちりばめて仕上げられている点に注目。ボンネットには2本のバルジ形状をあしらい、グリルには丸目4灯のライトを配置しています。
ケンメリにはメッキのバンパーが装着されますが、それだと全体のテイストがチグハグになってしまうため、バンパーレス仕様で仕上げています。グリルのパネルは他の部門に新しく導入されたという3Dプリンターを使って製作したとのこと。
サイドのハイライトは“サーフライン”と呼ばれる特徴的なプレスラインです。これはケンメリと「ハコスカ」と呼ばれる3代目の「C10型 スカイライン」に採用された意匠で、旧い世代のスカイラインを象徴するアイコンでもあります。それを再現するにあたり、「すべてのスカイラインへの敬意」を盛り込むため、あえて「ハコスカ」の意匠で仕上げてあるのもこだわりだそうです。
また、サイドウインドウのグラフィックも印象には大きく影響しますので、クォーターウインドウの形状をケンメリに寄せる加工をおこなっています。
そして、リヤビューのポイントは、後端に向かって大きく絞られたフォルムでしょう。ここもフロントセクションと同様にFRPでイチから造形し直されています。テールエンドのガーニッシュもケンメリをイメージしたものが装着され、特徴的な丸4灯のテールランプも再現されています。ランプユニットはスカイラインの純正品を流用したかったそうですが、要件を満たせるものが見つからなかったため、トラック用のパーツを使っています。
また、各部に装着されたエンブレム類もこだわりが見られます。リヤガーニッシュはベースのR35用を使っていますが、右の「350GT」は2段に変更し、内部を青にしています。
リヤフェンダーの文字は、「Skyline」部分がケンメリ用の純正(製廃)で、盾状のいわゆる「GTバッジ」は「RV37型 スカイライン」の「NISMOパッケージ」用のフロントエンブレムの流用で、これもなかの地を赤に変更しています。
ちなみにナンバーに記された車名の「NEO Skyline」の「NEO」のデザインは、「R33型 スカイライン」などに搭載された「NEOストレート6」エンジンのロゴのオマージュで、そのロゴのイメージカラーには、「DR35型スカイラインRS」のエンジンのヘッドカバーに使われた渋い色合いの赤を採用するなど、細かいところにまで「すべてのスカイラインへの敬意」がちりばめられています。
こちらの「NEO Skyline」の製作は、「Z Lealia」より少ない12名の4年生によって行われ、製作期間は6カ月とのことです。