ヤンチャ魂がウズウズしそうなブリフェンマキシマ
当時最高グレードの「マキシマ」のさらに上を創造 「ブルーバード極」
角張ったフォルムやフェンダーが張り出した特徴的なデザインを見て、忘れかけていたヤンチャな魂がウズウズする、という気もちになってしまう人がいるかもしれません。そんな雰囲気をまとったこの車両も、20歳過ぎの若者が製作したと聞いて驚かされます。
この「ブルーバード極」と名付けられた車両を製作したのは、「日産愛知自動車大学校」の3年生の学生だそうです。
ベースとなったのは「PU11型 ブルーバード・マキシマ」です。製作のテーマは「いまはなくなってしまったピラーレスの開放感をもった昔のセダンをベースに、いまの若い世代にも響くカッコよさを備えさせて再びセダンの魅力を掘り起こしたい」というもの。
いわゆる「温故知新」の考えをベースに、クルマ離れが課題となっているいまの若い世代に、憧れられるクルマを作りたい、ということで、当時ブルーバードの最高グレードだった「マキシマ」のさらに上級のグレードをイメージして仕上げたそうです。
最高グレードのさらに上をカタチにするために、モチーフとしたのはメーカーがカスタムしてつくる「AMG」などのスペシャルバージョンです。
当時、そのカッコよさに憧れて、国産の高級セダンをカスタムして近づけようとしていた流れを参考に、当時を現役で知る人たちが見ても「悪くないな」と感じてもらえるようなシブい雰囲気を目指し、そこに自分たち若者世代の感覚をバランスさせてデザインの方向性を定めたとのこと。
スタイリングの構成でいまの感覚をバランスさせる際に細心の注意を払ったのは「やり過ぎていない印象」という点で、やり過ぎたりバランスを間違ったりすると、当時のヤンチャなクルマのイメージに寄ってしまうので、ちょうどいいラインのギリギリを攻めるのに苦心したそうです。
まず、外観のポイントになるのはブリスター形状のフェンダーでしょう。「スカイラインRS」や「シルビアRS」で大人気を博した「シルエットフォーミュラ」のマシンを思わせる、ボディとフェンダーに大胆に段差をつくる造形でスパルタンな印象を作り上げています。
ここで苦労したのはフェンダーとドアとの整合性の部分。大きく段差を作った上でちゃんとドアの開閉を実現させるには、厚みを増やしたドアとボディの合わせ面のつじつま合わせをはじめ、開閉の動きで逃がさないとならない部分や、トアヒンジの作動確保など多岐にわたります。こちらを解決するとあちらに問題が発生して……と、予想外に生まれる問題を解決するのにいちばん時間を食われたとのこと。
ちなみにブリスター化でかなり幅を広げているという印象を受けますが、実際の拡幅量は片側1cmに留まっているそうです。これは、もとのフェンダーが意外とボディから突き出ているためもあるとのこと。
フロントで注目なのはバンパーの下まわりです。基本の部分は純正のままでモール類を外してスムージングしたくらいですが、迫力を出すために下部を張り出させる造形に仕上げるにあたって、その追加部分を分割パーツとすることで、万が一破損してしまった場合にも、部品単位の修理交換で済ませられるように配慮しているそうです。
リヤまわりも基本的にはバンパー下部のアンダースポイラー部分の加工がハイライトとなりますが、じつは製作側のこだわりはトランクスポイラーなんだそうです。完成状態を見るとさり気ない存在感に映りますが、このさり気ない印象に落ち着かせるために、切った貼ったをくり返し、ようやく納得のいく雰囲気に仕上げられたとのこと。ちなみに右下から覗く極太のマフラー出口もステンレスのパイプや板から作り上げたものだそうです。
こちらの「ブルーバード極」を製作したのは「日産愛知自動車大学校」の3年生グループです。「京都校」と違ってこちらの「自動車整備・カーボディマスター科」は3年制となっているため、製作に充てられる期間も短く、この車両はなんと50日間で仕上げられたそうです。
さて、このようになかなかのクオリティと創作意欲を見せてくれた「日産自動車大学校」の2校ですが、今回紹介した3台のような卒業制作の車両製作では、その履修課程で獲得した技術や知識をアピールする大胆な加工を行って仕上げながらも、しっかりと車検も通せる内容で構成されているという点も注目です。
「クルマは走ってナンボ」という考えが根底にあるのは、さすがにメーカーの人材を育成する学校だと思わされました。