2025年はN-BOXの動きに注目
N-BOXの2024年1月から11月の累計販売台数は19万1423台(月販平均約1.7万台)なのに対し、2位スズキ・スペーシアは15万3136台(月販平均約1.4万台)となっているので、車名(通称名)別2024暦年締め年間新車販売台数トップはN-BOXでほぼ決まっているといえる。
「常勝N-BOX」はいまに始まったことではないが、ここのところは販売台数に以前ほどその勢いが感じられない。さらに、パワーダウンしているだけならまだしも、2024年はそれまでに比べて、明らかにN-BOXの届け出済み未使用中古車の流通台数が増えていることのほうに筆者は不安を覚えている。
軽自動車は、そもそも車種を問わず再販価値がいいことで知られている。たとえ走行距離10万km以上で初年度届け出後10年以上経っていようが、よほど程度が悪くない限りは、再販価値が残っているのが軽自動車なのである。
そのような軽自動車のなかでN-BOXの再販価値はまさに軽自動車のトップといえるほど、いままでは高かった。中古車専売店で聞くと、「スペーシアとタントの上、つまり頂点にN-BOXがいる」と説明してくれた。ホンダカーズ(ホンダ系正規新車ディーラー)で聞いても、「再販価値が安定して高いので、初回車検など短いサイクルで乗り換えてくれるお客も多い」とのことであった。
もちろん、これは中古車でも同じであり、中古車として買った人も乗り換えるときにはN-BOXの再販価値の高さの恩恵を受けることができたのである。しかし、この状況を一変させるフェーズに入ったのが2024年である。すでに「再販価値ではスペーシアのほうが上まわっている」との情報も入っている。
N-BOXの人気の理由のすべてが再販価値というわけではないが、経済合理性を最大限追求する人もユーザーに多い軽自動車なので、2025年は車種別販売ランキングでも何らかの変動が出てくるかもしれない。
すでに未使用中古車が多いということは、新車での販売台数稼ぎのために、ディーラー名義などで新車にナンバープレートだけをつける「自社届け出」が盛んに行われており、そのため未使用中古車も市場に大量に出まわっている。2025年もこの傾向が続けば、新車ではなく未使用中古車としてN-BOXを購入する人も増えてくるので、新車販売への影響も避けられなくなるのではないかと考えている。
スズキでもスペーシア系の未使用中古車は見かけるが、N-BOXよりは抑制的に見える。ダイハツではそもそもタントよりも、ムーヴキャンバスの未使用中古車が多い状況が続いている。
2025年における軽自動車の展望としては、ダイハツの勢いに復調傾向が見られない、あるいは復調に時間がかかるようならば、ブランド別ではスズキの独走が予測でき、軽四輪乗用車に限っていえば、ホンダの2位も常態化していくことになるかもしれない。
ただし、それにはN-BOXの自社届け出が2024年並みかそれ以上必要となる。N-BOXが事業年度別(4月から翌年3月)、暦年締めでの年間販売台数や事業年度締めでの上半期や下半期などのタイミングでの新車販売台数ナンバー1維持を自社届け出に頼って続ければ、それだけN-BOX自体の新車販売を苦しめることとなる。
N-BOXの現状はかなり気になるレベルとなっている。このような状況にスズキがスペーシアでガチンコ勝負を挑むことはさまざまなリスクもあり、「1番ではなくていいから2番でいい」ではないが、無理はしてこないだろう。
N-BOXは今後どのような動きを見せるのか、それがますます気になるのが2025年となるだろう。