かつて扱いづらかった装備も現代ではさま変わりしている
さて、1980年代に流行った電子制御のなかでは、「4WS(4輪操舵)」もスポーツドライビング派からは不評を買った機構だった。ホンダ・プレリュード、日産スカイライン、三菱ギャランVR-4、マツダ・カペラなどが4WSを採用した初期のモデルとして記憶に残るところだ。
いずれも日常走行では後輪が操舵することでスタビリティを感じられたり、小まわりが利いたりといい点もあったが、スポーツドライビングでは違和感を覚えることも多かった。
そんな4WSだが、現在ではピュアスポーツモデルにも採用されるほどになっていることにお気づきだろうか。
国産ではレクサス、欧州車ではポルシェやランボルギーニ、メルセデスなどが4WSを積極的に採用している。なかでも注目したいのはFF最速を目指すフランスの雄「ルノー・メガーヌR.S.」にも4WSテクノロジー「4-Control」が採用されていることだ。
昭和の感覚では「FFの後輪はフロントをジャマせず、素直についてくればいい」とされていたが、速いFFを生み出すには後輪のグリップを引き出し、後輪も曲がることに積極的に関与させていく必要があるというわけだ。
1980年代といえば、ターボによってエンジンパワーを引き上げることが主流になっていった時代でもあった。初期のターボエンジンにおいては、アクセル操作とエンジン出力の発生に時間差があり、それをターボラグと呼んで忌み嫌っていた。ターボというのは排気エネルギーを利用してコンプレッサーをまわし、過給する仕組みである。
アクセル操作やエンジン回転上昇と、実際の出力にタイムラグが発生するのは仕方がないことだが、ターボラグが大きいエンジンでは適切なコントロールが難しいという問題があった。
その解決策として右足でアクセルペダルを踏んだまま、左足でブレーキペダルを操作してエンジン回転を落とさないようにするといったテクニックもスポーツドライビングとして広まったこともある。アクセルを踏んだままシフトアップするなど、とにかくアクセルオフをしないことが速く走るために必要だったのだ。
そんなターボラグは、いまや完全に死語となっている。2000年代のダウンサイジングターボ・ムーブメントもあって、レスポンス重視の小さなターボチャージャーや軸がウルトラスムースにまわるボールベアリングターボなど、さまざまな技術が実用化されたおかげで、気になるレベルのターボラグを感じることはほとんどなくなっている。
その背景には、多段ATやDCT、CVTの普及もあるだろう。2ペダルのターボエンジン車であれば、ただアクセルを踏み込んでいればいい。機械のほうが短い変速時間で、適切な変速比を選んでくれるため、ドライバーはラグのないシームレスな加速を味わうことができるようになっている。