サーキットベストの「固すぎる足」は語り草! やりすぎタイプRこと「FD2型」シビックを振り返る (2/2ページ)

不利なセダンボディを疑うことなきRスペックへ

「タイプR」向けハイチューン仕様のK20A型2リッター直列4気筒DOHC「i-VTEC」エンジンは、吸排気抵抗の低減やピストン形状変更による高圧縮比化(11.5→11.7)などにより、DC5インテR用の220馬力/8000rpm&206Nm/7000rpmに対し、225馬力/8000rpm&215Nm/6100rpmへと向上。6速MTも1〜3速のオーバーオールギヤレシオを低く、4〜6速を高く設定するなど、加速・最高速双方の性能アップを図っている。

 だが同時に実施されたスロットルのドライブ・バイ・ワイヤ化によるアクセルレスポンス向上のほうが、ドライバーにとっては体感しやすい変化だったのも事実。果たして実際の速さにどれほど結びついているかは、同条件で0-400mなどのテストを行いタイム計測しなければわからない……というのが偽らざる本音だろう。

 その一方でボディとシャシーは、同時に軽量化も行うことでベース車からの車重増加をわずか1.8kgに抑えながら、徹底的に強化された。

 とりわけサスペンションは、前後ともスプリングをプログレッシブレートとし、ダンパーはサイズを拡大、スタビライザーもフロントを中実化しながら、とくにリヤのスプリングレート、ダンパー減衰力、スタビライザー径を大幅にアップ。これらにより、リヤのロール剛性を上げ、タイヤの接地圧を高めることで、トラクションと旋回性能をともに向上させている。

 さらにはタイヤも、225/40R18 88Yのブリヂストン・ポテンザRE070を専用開発。太溝を3本配置し排水性を確保しながら各部のブロック剛性を高め、とくにサーキットでのドライグリップ性能を向上させた。

 これらの結果、確かにサーキットでの速さは進化した。しかしその代償として、公道での乗り心地は、これがサーキットベストの「タイプR」であることを考慮してもなお筆舌しがたいものへと変貌を遂げた。

 路面の凹凸をすべて忠実に拾い、とくに車体のリヤ側を常に上下動させることで、乗員の視線をぶれさせ眼精疲労や車酔いを誘発。首や腰にも多大な負荷をかけ続ける。頸椎と腰椎の椎間板ヘルニアを患う筆者は、FD2シビックRに試乗するたび、この持病を悪化させていたことを、今でもよく覚えている。

 だから、ホンダアクセス純正の「スポーツサスペンション」を含め、市販のFD2シビックR用チューニングサスペンションは、この乗り心地を改善しつつ同等以上の速さを得る方向でセットアップされたものが少なくなかったと記憶している。

 中古車を購入する際は、一般的にはフルノーマルの車両を選んだほうが、購入後の耐久性の面でもリスクが低いと思われる。しかし、ことFD2シビックRに関しては、チューニングサスペンションが装着された個体を積極的に選んだほうが、むしろ購入コストを抑えられ(社外パーツがついた個体は安価な傾向にあるため)、街乗りでも快適に走れるのではないだろうか。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
-

新着情報