この記事をまとめると
■2022年よりWRCではRally1車両にハイブリッドシステムを導入した
■車両価格が高価になりマシンも重くなるというデメリットが目立った
■多くのチームの要望により2025年から再びハイブリッドシステムを非搭載とする
2025年はハイブリッドシステムを撤廃!
WRCのシーズンオフは短い。
11月末の第13戦「ラリージャパン」で2024年のシーズンが終わり、1月末の「ラリーモンテカルロ」で2025年のシーズンが幕を開けることから、各チームはわずか8週間に束の間のオフを楽しみつつ、開幕の準備を行うわけだが、2025年は車両規定が変更されたことから、各チームはよりハードな仕事を行っていることだろう。
2025年のWRCではワンメイクのタイヤサプライヤーがピレリからハンコックに変わるほか、エンジンの吸気リストリクターも直径36mmから35mmに縮小されるなど、いくつかテクニカルレギュレーションが変更されているが、最高峰モデルの「ラリー1」を語るときに欠かせないトピックスとなるのが、なんといってもハイブリッドシステムを廃止したことだろう。
FIAはより多くの自動車メーカーの参入を促すべく、2022年よりWRCの最高峰クラスにラリー1規定を導入。市販車のモノコックに加えて、かつてのグループBのようにパイプフレーム車両にも認可を与えたほか、環境への対応を考慮してハイブリッドシステムを採用した。
ハイブリッドシステムはフォーミュラEでもサプライヤーとして豊富な実績をもつドイツのコンパクト・ダイナミックス社で、1600ccの直噴ターボエンジンと電気モーターの“ハイブリッドブースト”を組み合わせることにより、最大出力で500馬力以上、最大トルクで500Nm以上を発揮。その加速力は抜群で、大胆にモディファイされた空力デバイスと合わせて、モンスターマシンと謳われていた。
しかし、ハイブリッドシステムを搭載するが故に、車両重量が重く、冷却システムと合わせると2021年までのWRカーと比較して約100kg増量され、最低重量も70kgアップの1260kgに設定されていた。
そのため、コントロールが難しく、多くのドライバーがコーナリングに苦戦を強いられたほか、コスト面においても高価なハイブリッドシステムがネックになっていたことから、多くのメーカーの要望に応じて、2025年のWRCよりラリー1のハイブリッドシステムが廃止されることになったのである。
このハイブリッドシステムの廃止に伴い、車両の最低重量も1180kgに設定されるなど、軽量化を実現。電気モーターによるハイブリッドブーストがなくなったほか、前述のとおり、リストリクターのサイズが縮小されることから、エンジンパワーは低減されるが、WRカーならではの異次元のコーナリングが復活することになるだろう。
2025年もトヨタGAZOOレーシングWRT、ヒュンデ・シェル・モビスWRT、Mスポーツ・フォードWRTが参戦し、開幕戦からハイブリッドシステムを廃した2025年型のラリー1を投入。テクニカルレギュレーションに合わせて、土曜日までのポイントが廃止されるなど、ポイントシステムも変更されているだけに、よりシンプルかつ過酷なポイント争いが展開されるに違いない。