タイでもアルヴェルでウハウハなトヨタ
新車購入に際して、タイではオートローンを組むのが一般的と前述したが、そうなると支払い途中での乗り換え(下取り査定額などで残債処理を行う)も頻繁になるので、各モデルの再販価値というものがタイでは重視されている。
「いすゞの現地法人などでは、再販価値の維持のために値引きゼロでの販売を現状でも貫いているようです。『クルマはお客さまの大切な資産』という意識が強いようです。いすゞのメイン商品であるD-MAXのメイン販売地域ともいえる地方部のお客にはそのようなポリシーが支持されて成功し、絶大な信頼を得ているからこそ、タイではいすゞが強みを見せているのです。ただし、大量の在庫を抱えるなか、新エンジンを搭載した新型車を発表しております。このような状況変化は今後の売り方に変化をもたらすかもしれません」(現地事情通)。
話をバンコクモーターエキスポ2024に戻すと、会期中の出展ブランド別の予約台数の推移をみると、トップはトヨタの8297台となり、以下2位BYD6917台、3位ホンダ5081台、4位AION(広州汽車系BEVブランド)3668台、5位MG(上海汽車系)3311台、6位ディーパル(長安汽車系)2756台、7位三菱2609台、8位日産2219台、9位GWM(長城汽車)2060台、10位ネタ2016台となっている。
トップ10内に中国系ブランドが6つも入っている。タイでは中国系といってもBEVばかりではなく、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、純粋なICE(内燃機関)車もラインアップしているのだが、多くのブランドではBEVが販売の中心だ。タイにおいて、中国メーカー同士でBEVの乱売が顕著になっていることは、日本でもネットニュースなどでよく目にするようになった。
現地事情通は、「タイの自動車ユーザーもようやくBEVという幻想から目が覚めた」と表現するように、洪水被害などを見て「タイでBEVはやはり無理がある」と消費者が気づきはじめたなどともいわれている。しかし、「BEV=中国車」とほぼほぼいい切れるタイでは、相変わらずBEVの需要は旺盛のように見える。
これは、「政府からの補助金や各種優遇措置の『賜物』であり、補助金が段階的に引き下げられる今後の動向は見渡せません。タイ国内生産の規定台数を確保する意味でもBEVは乱売傾向となっていますが、この国内生産規定台数が、かつて中国生産モデルを輸入販売していたときの台数の2倍にまで引き上げられますので、乱売も限界があるように思えます」(現地事情通)。
「タイでは中国メーカーに日本メーカーが押され気味」という報道も日本では目にすることがあるが、この点については、「あくまで私見となりますが、中国メーカー車に翻弄されているのはホンダやマツダではないかと考えています。ホンダについてはタイでのラインアップがタイ人に対しては地味すぎるように見えます。マツダは変化に乏しく、消費者の間で飽きがきているように見えます」(現地事情通)。
日本国内同様にアルファードもガンガン売れるなど、高収益車種の販売も堅調なトヨタはタイでも安定感を見せている。トヨタが得意のHEVに対しては、タイ国家電気自動車政策委員会により、二酸化炭素排出量が1km当たり100グラム未満の場合は6%、二酸化炭素排出量が1km当たり101〜120グラムの場合は9%、物品税率を引き下げるという優遇措置が2026年から2032年まで講じられている。
このような優遇措置もあり、HEVではとくに世界的にその性能の高さが認知されているトヨタは、中国系メーカーをほぼ寄せつけないままタイでのトップシェアを維持しているともいえよう。
ただしタイ国家電気自動車政策委員会は、2024年12月下旬にはHEVに加えマイルドHEVにも優遇措置を講じることを発表している(物品税率の引き下げはHEVよりも少ない)。
現地報道によると、いまのタイにおける新車販売の低迷傾向は緩やかに回復してとのことだが、本格的な回復までには時間を要することになるだろうとも付け加えられていた。
販売だけではなく車両生産拠点としても東南アジアの要となるタイ。国内販売の低迷だけではなく、完成車輸出でも問題を抱えるタイ工業連盟自動車部会は、2024通年の自動車生産台数目標値の引き下げを発表し、国内向け・海外向けを合わせた目標値を170万台から150万台に下方修正している。
タイの現地通貨バーツの「バーツ高」によりタイからの完成車輸出にも悪影響が起きており、タイ工場の閉鎖やタイでの生産見直しなどを一部日本メーカーは余儀なくされている。
「所詮は海の向こうの話」と思うなかれ。その影響は現状ではなんともいえないが、日本はグローバル経済の渦中にいるだけに、「対岸の火事」ではなく、思いもよらないところでその余波を受けるかもしれない。