サンク・ターボ復活にファン歓喜(ただしEV)! そういえば前にもサンク・ターボの再来といわれた「クリオ・ルノースポールV6」があったけどどんなクルマだった? (2/2ページ)

ヒストリックカーとしてのクリオ・ルノースポールV6の印象

 そのレイアウト変更は、いうまでもないがさすがにポン付けみたいにはいかず、ホイールベース、前後のトレッドともに拡大されてるのだが、そのホイールベース・トレッド比は明らかなショートホイールベース化、つまりコーナーでより曲がりやすい方向へとチューニングされていて、そのうえV6ユニットの重心高が高く、さらにはリヤまわりの剛性が足りなかったせいか、攻め込んでいくとかなり手強いクルマだった。

 ワインディングロードでは途中まではアンダーステア、限界を超えると一気にオーバーステアといった感じで、そのトリッキーさに何度かヒヤリとさせられたのをハッキリと覚えてる。見た目が見た目で目立ったから、街なかなどで「すっごいクルマを転がしてる」感を楽しむのには最高だと思ったけど、僕には峠で完全に手懐けるのは無理だな、なんて感じていた。

 2003年になるとフェイズ2へと進化して、ベースのクリオと同じくフロントとリヤのデザインが一新されたが、同時にエンジンのチューンアップもさらに進んで254馬力へとパワーアップ。0-100km/h(同様に正確には0-60mph=97km/h)加速タイムは5.8秒、最高速度は246km/hへとパフォーマンスも大きく引き上げられた。

 さらには高剛性のサブフレームを追加し、ダンパーやスプリングだけじゃなく動作角まで変えるなど、シャシーにも手が入ってハンドリングの向上もしっかりと狙っていた。たしかにフェイズ1と比べればだいぶ扱いやすくなった気はしたものの、それはあくまでも「比べれば」の話であって、マイルドかピーキーかと問われればやっぱりピーキーな部類。ミッドシップスポーツカーとして飛び抜けて優れたモデルへと変貌したわけじゃなかった。

 フェイズ1ほど怖い想いはさせられなかったけど、コーナリングが滅法楽しいかといえば、そういうわけでもなかった。フェイズ1のときの先入観が邪魔をしたところもあったかもしれないのだけど……。

 でもまぁそんなのは昔の話だ。いまやクリオV6も立派にヒストリックカーの仲間入り。僕もジジイの仲間入り。そういうクルマとのつきあい方は理解してるし身に染みついてる。刹那に100%を楽しもうとするのではなく、8割ぐらいで長く楽しむのが吉、なのだ。

 そう考えると、クリオV6はかなり魅力的な存在だ。上までまわしたときの自然吸気V6エンジンの雄叫びが後ろから耳に入ってくるのに身震いしながら、強制的にすごいマシンを走らせてるような気分にさせられるシャシーとスパーリングするかのように戯れる。10分走っただけで素晴らしい気分転換になるはずだ。時間が解決してくれる問題というのは、たくさんある。

 さて、2026年に販売されることになりそうな新しい「サンク・ターボの再来」は、いったいどんなフィーリングでもって僕たちを魅了してくれるのだろう? 待ち遠しくて仕方ない。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
-

新着情報