この記事をまとめると
■公益社団法人「全日本トラック協会」について解説
■日々トラック業界が直面する課題に取り組んでいる
■年に一度「トラックドライバーコンテスト」も主催
トラック業界が直面するさまざまな課題に取り組む
「○○協会」「○○組合」「○○連合会」など、いわゆる業界団体と呼ばれる組織は数多存在する。団体によって法人格は異なるが、「財団法人(公益・一般)」「社団法人(公益・一般)」などがあり、法人格を持たない「任意団体」も存在する。これらは「非営利団体」であり、一般に当該業界全体の発展に資する事業を行っている。
トラック業界は、一般的に運送事業者が所属する業界とされるが、広くとらえれば運輸事業、物流事業に携わる事業者はすべて同じカテゴリーに含まれると解釈できる。それは、陸運関連業界の団体が多いことからも明らかだ。これには鉄道、バス、タクシーなども含まれるが、貨物輸送に絞っても日本貨物運送協同組合連合会や日本陸送協会など、複数の存在がみられる。そのようななかで、全国のトラック運送事業者を取りまとめているのが、公益社団法人の「全日本トラック協会」である。
この団体は「貨物自動車運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保することによって、事業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉に寄与するとともに、事業の社会的、経済的地位の向上及び会員相互の連絡協調の緊密化を図ることを目的」として設立された。
おもな事業は、
・貨物自動車運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保することによる事業の健全な発展の促進
・公共の福祉に寄与するための事業の実施
・事業の社会的、経済的地位の向上及び会員相互の連絡協調の緊密化
・貨物自動車運送事業に関する指導、調査、研究、統計、資料収集
・貨物自動車運送事業に関する意見の公表、国会・行政などへの具申、関連法令の施行措置に対する協力
・事業用資材、運営資金の斡旋
などといったことである。
歴史は旧く、戦後間もない1948年に組織され、現在の会員数は403社(正会員:353社、賛助会員:50社)。環境省の資料によると、全国のトラック運送事業者は6万社を超えているというから、一見少ないようにも思えるが、それは組織体系をみれば納得できる。
同協会は名前のとおり全国組織で、地方組織は都道府県単位(北海道のみ地域別7組織に分かれる)に別途存在する。多くの事業者はそこに所属しているのだ。その総数は約5万社で、事業者の大半が所属していることになるから、まさに業界の代表と呼ぶにふさわしい一大組織なのである。ちなみに、全日本トラック協会の正会員はそういった地方組織の役員社が大半で、賛助会員は関連団体などが対象になっているのだ。
組織のなかには多くの常任委員会や部会があり、そこで業界が直面する課題に日々取り組んでいる。2024年問題や業界の地位向上にも熱心で、トラックドライバーの地位向上や労働環境改善にも積極的だ。通常の経営者団体ではこういった活動はあまりみられないので、従業員にも優しい協会だといえよう。
会員社には法律の改正や関係省庁からの通達、告示、補助金や助成制度の内容を伝えると同時に、その目的、狙い、具体的な対処、手続きなどに関する情報を提供している。また、トラックドライバーの技術向上のために、ひたちなか市の自動車安全運転センター安全運転中央研修所で、年に1度「トラックドライバー・コンテスト」を主催するなど、その活動範囲は広いのだ。
地方組織も同様に積極的な動きをみせており、なかには地域のイベントに参加するなどして、業界に対する地域社会の理解が深まるように努力をしているといった例もある。
とかく業界利権の保持に奔走する団体が多いなか、地道に業界の改善・地位向上に取り組む稀有な存在だといえよう。70年を超える歴史は、伊達ではないということである。