人の流れを考えれば「後ろから乗って前で降りる」のが効率的なハズ! それでもイマドキの路線バスが「中扉」を採用する納得の理由 (2/2ページ)

床が低い場所に扉を配置している

 結論からいうと、それはバリアフリーの観点から普及した「低床バス(ノンステップバス、ワンステップバス)」独特の構造によるものである。バスは後部にエンジンを配する(マイクロバスなどは、前部にエンジンを配するタイプが多い)ので、その周囲の床はどうしても高くなる。ツーステップバスであれば、床自身は高くなるのだが車内全体がフラットな構造になるので、後部にドアを設けても大きな支障がない。

 しかし、「低床バス」は床を低くできるのが車両の中央までで、後方はエンジンや駆動系機器などの関係から高くせざるを得ない。そもそも、「低床バス」は高い床がバリアとなる人たちに配慮しているものだから、高くなった後部にドアを設けては意味がなくなってしまうのだ。

 また、安全性の面から運転手には中扉が好まれる傾向にあることも大きい。現在の路線バスはほとんどがワンマン運転であるため、後部扉(中扉を含む)の扱いや安全確認も運転手が行う。これにはセンサーが併用されているものの、重要なのはミラーによる目視確認だ。いうまでもないが、運転手により近いほうがこの確認がやりやすいのである。路面電車でも、ワンマン化が進んだときに導入された車両は中扉が多かったといわれている。

 では、前方の扉と中扉のどちらから乗り降りするのが乗客の流れがスムースなのかというと、その答えは出ていないようである。これは、地域、バス会社、路線によって考え方があるようで、メリット・デメリットの判断が難しいのだそうだ。

 前乗りであれば料金は先払いになるので、均一区間同一料金制の路線には採用がしやすい。多区間変動料金制であれば後払いが便利なので後ろ乗り(中乗り)になる。しかし、京都市営バスなど一部の事業者は、均一区間でも後ろ乗り(中乗り)を採用しているというからおもしろい。

 路線バスは地域運用がほとんどなので、ルールとして定着していれば乗客が戸惑ったり不便を感じたりすることがないのだろう。普段何気なく利用している路線バスだが、乗客の利便性や安全性に配慮してさまざまな工夫が重ねられているのである。


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