ついに5気筒エンジンが過去のものになる! ところで4気筒も6気筒もあるけど5気筒にはどんなメリットがあったのか? (2/2ページ)

V6がある現状では5気筒のメリットは少ない

 ご存じのように、モジュラー設計エンジンとは、同じボアピッチや同一のボア×ストロークに固定し、シリンダー数を変えることで排気量や目標スペックに合わせ込むというエンジン設計の考え方。

 最近でいえばBMW系のエンジンで見かける1.5リッター3気筒と2リッター4気筒のラインアップがモジュラー設計の好例だ。

 シリンダー数によるポジショニングとエンジンのモジュラー設計という自動車業界のトレンドが多くの直列5気筒エンジンを生んだといえる。

 5気筒エンジンは、モジュラー設計の場合であれば4気筒エンジンより出力を稼げることにある。加えて、完全バランスの6気筒ほどではないにしても、4気筒よりはエンジン由来の振動を抑制できるのも5気筒エンジンのメリットといえる。

 結果として、適度にパワフルで快適性アップというのが5気筒エンジンのもつイメージだった。

 ただし、現在のアウディRS3を見てもわかるように、FFプラットフォームに5気筒エンジンを横置きで搭載するということは、かなりギチギチになってしまう。車幅を広げてタイヤを外に配置しないと物理的にステアリング切れ角を確保できないこともある。

 合理的に考えると、同じパワーを求めるのであれば、4気筒エンジンをハイブーストで過給するなりしたほうが有利であるし、ブランド的に多気筒がほしいのであれば、V型6気筒エンジンのほうがスマートに搭載できるというのも事実だろう。

 そんなわけで、直列5気筒エンジンというのは、乗用車においてはニッチとなり、冒頭で記したように消滅の危機に瀕している。

 電動化の流れがハイパースポーツでも進んでいくなかで、もしかすると5気筒エンジン+モーターというハイブリッドシステムを搭載することがあるかもしれないが、おそらくアウディRS3の生産終了をもって、直列5気筒エンジンを新車で購入できる時代は終わってしまうだろう、残念なことだが。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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