昔は3速や4速だったのにいまや9速10速当たり前! クルマのATが多段化したのは「昔は技術的に難しかった」からではなかった (2/2ページ)

CO2の排出量削減を目的に欧州でもATが普及

 一方、より速度域の高い欧州では、郊外の道路で時速80km、高速道路では時速130kmが速度制限で、ドイツのアウトバーンには速度無制限区間もある。そうなると、4~5速ではエンジン回転が高くなりすぎ、燃費が悪くなるうえ、エンジン騒音も大きくなって快適な移動ができない。

 そこで、欧州では永年、5速手動変速機(MT)が大半で、ATはなかなか広がらなかった。

 しかし、2000年前後から欧州の二酸化炭素(CO2)排出量規制が強化された。燃費規制値を達成できない新車を販売すれば反則金の支払いが生じるようになった。こうなると、燃費のために多段化が必要になる。

 同時にまた、MTよりATのほうがCO2排出量を管理しやすくなった。運転の仕方を素早くコンピュータが検知し、間をおかず上の段へ自動変速することで、燃料消費を抑える。MTで、運転者に変速を任せておけば、下の段で走り続け燃費を悪化させてしまいかねない。

 そこで欧州でもATの採用が増えた。そのために、MTをもとにした自動クラッチ式やクラッチを奇数段と偶数段それぞれにもつDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が編み出され、AT化に余分な開発費や生産費用を加えず、多段化を進めた。もちろん、従来からのATも多段化されていった。

 CO2排出量の削減は、気候変動抑制のためで、つまりは環境対策のために変速機の多段化が不可欠になった。技術的難しさというより、適正な原価で多段化できる方式も考え出されたのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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