この記事をまとめると
■変速機の多段化が進んだのは2000年代に入ってからだ
■米国市場を主力と考える自動車メーカーにとってクルマのATは4~5速であれば十分だった
■欧州のCO2排出量規制が強化されたため欧州でもATの普及が加速していき多段化も進化した
速度域が低いアメリカや日本ではATは4〜5速で十分!?
自動変速機(AT)が著しく多段化したのは、2000年代に入ってからだ。それまでは、3速や4速ATがほとんどだった。そのうえで、オーバードライブと呼ぶ、高速走行用の段が設けられていた例がある。とはいえ、今日のような10速や9速といった段数は、かつて想像もされなかった。
ATが3速や4速で問題なかった背景にあるのは、クルマの走行速度がかかわる。のちの多段化では、ATで使われてきた遊星歯車の数を増やすことで対処してきたので、技術的に難しかったとは考えにくい。
そもそもATが普及した米国では、フリーウェイの制限速度が時速55マイルだった。換算すると時速88kmである。近年は、時速65マイルや70マイルといった地域もあり、米国の場合は州によっても差がある。
一例として、時速70マイルの道路でも、時速に換算すれば112kmなので、日本の高速道路の制限に近い速度といえる。
こうした交通環境では、基本的には4速ATでほぼ無理なく走れ、強いていえばもう1速高速専用の段があれば、エンジン回転数を下げ、より快適な高速移動ができるだろう。
したがって、米国市場を主力と考える自動車メーカーにとって、米国と日本で使うクルマのATは、4~5速であれば十分商品性を保つことができた。