この記事をまとめると
■イタリアのブレンボ社がスウェーデンのオーリンズ社を買収する
■オーリンズはモータースポーツの分野で実績を残してきたサスペンションメーカーだ
■産業構造そのものが変わる可能性が高まっており事業の多角化が求められている
ブレーキとサスペンションがセットで開発される未来もあるかも
あのブレンボがオーリンズを買収する。買収額は4億500万ドル(1ドル158円換算で、約640億円)。
イタリアのブレンボといえば、プレミアム系のスポーツタイプモデルには欠かせない制動装置としてグローバルで認知度が高い。ホイールの間からチラ見する、ブレンボのロゴが入ったブレーキキャリパーは、そのクルマのハイパフォーマンス性を証明しているといえる。
自動車メーカーにとっても、ブレンボの基礎技術は車両開発におけるベンチマークだ。また、アフターマーケットの世界でも、チューニングカーにとってのマストアイテムと考える人が少なくない。
そんなブレンボが買収を決めた、オーリンズ。モータースポーツに詳しい人ならば当然、オーリンズの存在を知っていることだろう。
改めてその足跡と実績を紹介すると、1976年にスウェーデンで創業。現在の本社はストックホルムにある。創業者自身が二輪車モータースポーツの世界にいたことから、最初はモトクロス、その後にスーパーバイク、MotoGPなどで二輪の世界トップカテゴリーで高い実績を上げてきた。
あわせて、四輪モータースポーツでもF1、インディカー、NASCARなどでレーシングカーサプライヤーや運営チームからの細かい要望に対応する企業として高い信頼を得てきた。
生産と開発は、スウェーデンとタイにあり、ドイツとアメリカを含めて従業員は総勢約500人だ。
ブレンボ・ジャパンによれば、今回の買収はアポロ・グローバル・マネージメントの関連会社が運営する投資ファンドを介して、自動車部品大手のテネコからオーリンズ・レーシングの株式を100%取得するものだ。
では、なぜこのタイミングでブレーキ関連会社のブレンボが、サスペンション関連会社のオーリンズを買収する必要があるのか。
あくまでも私見であるが、いわゆる「100年に一度の自動車産業・大変革期」に突入したいま、自動車メーカーを頂点してティア1、ティア2、ティア3が段階的に紐づくという、これまでの産業構造そのものが大きく変わる可能性が高まっている。
そうしたなかで、高い技術力をもつブレンボやオーリンズのようなティア1としては、量産効果だけではなく、即効性の高い事業の多角化が求められているところだ。
カーボンニュートラルを目指して、仮に世のなかのクルマがすべてEVになったとしても、ブレーキシステムやサスペンションシステムは消滅しないだろうが、旧来型のシステム体系や事業体系が維持される保証はない。
さまざまな投資ファンドが、ティア1再生に興味を示していることもあり、今後も有名ティア1の合従連衡が続くのではないだろうか。