腕の動きを制限されると事故の際の怪我の危険性が高くなる たとえば、漫画のように右ハンドルのクルマで、右手をハンドルの「9時」の位置にガムテープで固定したとすると、左方向には180度程度は切ることができるが、右方向には90~100度ちょいしか切ることができない。これでは左右非対称なので、現実的ではないだろう。
ガムテープをハンドルに固定した状態でまわしている様子 画像はこちら
仮にハンドルのトップ、「12時」の位置で右手を固定しても、左右に180度ずつしか切れない。乗用車のロックtoロックは、3回転半から4回転ぐらい。ステアリングギヤ比がクイックなスポーツカーでも3回転以下ということを考えると、左右に180度ずつしか切れないガムテープデスマッチでは、許容舵角の6分の1程度しか使えないことになる。
もともとハンドルの持ち替えを想定していないフォーミュラカーや、ホンダがS2000に採用したVGS(Variable Gear ratio Steering=車速応動可変ギヤレシオステアリング機構 ロックtoロック=1.4回転)、BMWのアクティブステアリングなどであれば、ガムテープデスマッチの意味もあるかもしれないが、そのほかのクルマでは「?」といったところ。
ホンダS2000 VGSのハンドルまわり 画像はこちら
たとえ、コーナリング=ドリフト。「ステアリングはきっかけだけ」に徹したとしても、イザというときカウンターステアの舵角不足で、スピン、クラッシュのリスクはあるし、ドリフトが続いたとしても、タイヤマネジメントの面でネガティブな要素しかない。
競技として、同じレギュレーションのもと、安全な場所で競い合うのなら、ガムテープデスマッチもひとつのルールとしてありだろうが、汎用性の高いドライビングテクニックを磨くのに役立つかというと、メリットよりデメリットのほうが大きいはず。
とくにクラッシュした際、腕がハンドルに固定されていると、ハンドルのキックバックで固定されていた手が大けがをする可能性があるので心配だ。
ガムテープを装着した状態でハンドル操作をしている様子 画像はこちら
そんなリスクを冒すよりも、同じ曲率が続くコーナーであれば、ハンドルは「1回切って、1回で戻す」ことを徹底させたり、フロントタイヤを転がして、クルマの向きを変えることに集中したほうが、ドラテク向上には役立つはずだ。