EV時代もこれまで同様の車検は必要か?
もちろん、日本においても、被害者対応として損害保険制度があり、なおかつ車検の際に更新すべき要素として、自動車損害賠償責任保険(通称、自賠責保険)の加入が義務付けられている。これは、被害者保護の観点で定められている。
日常的に、クルマの所有者や利用者自身でクルマの調子に気を配っている人はどれほどいるだろう。タイヤの空気圧はもちろん、タイヤの溝の深ささえ気にかけていないと思われるクルマが走っているのを見かける。そうした多くのクルマを対象に考えれば、車検という期限をきっかけに、クルマが安全に走行できるか確認することも悪くはない。
一方で、クルマが走行に適した状態であるかどうかは、歳月だけでなく、走行距離によって大きな差があるはずだ。年間5000kmほどしか走らない人と、1万km以上、なかには数万km走る人もいるかもしれない。つまり、歳月だけで規定される車検制度は、最大公約数的な制度であり、万全とはいえない。走行距離の少ない人にとっては、余計な出費と感じるだろう。
ただし、走行距離が少なくても、経年変化によって整備や交換が必要な箇所もクルマにはある。
そのうえで、電気自動車(EV)が普及すると、整備項目が減るといわれ、それに従えば、EVについては車検時期をもっと伸ばしても差し支えないかもしれない。
クルマの変革期には、単に新車の機構や性能、あるいは充電器といった社会基盤の整備にとどまらず、車検の在り方も見直すことが求められることになるかもしれない。