この記事をまとめると
■走行中に稼働するエンジンの一部気筒を停止するのが気筒休止システムだ
■いままではアイドリングストップシステムが搭載されていたが現代では採用が減った
■アイドリングストップによるCO2排出量削減効果は大きいといわれている
走ってるのにエンジンが止まるってどういうこと?
フォルクスワーゲン(VW)のSUV(スポーツ多目的車)である最新の4代目ティグアンは、マイルドハイブリッドとなり、モーターの補助を備えるとともに、ガソリンエンジンは気筒休止システムを装備し、走行中の燃費向上に役立てている。ある一定速度で走行し、急加速のように大きな負荷のない状況では、直列4気筒エンジンのうち2気筒の運転を止め、残りの2気筒だけの力で走らせることにより、止めた2気筒分の燃費を節約する。
VWが気筒休止をはじめたのは2012年の7世代目ゴルフからだ。ほかに、米国ゼネラル・モーターズ(GM)のキャデラックやシボレー・コルベットのV型8気筒エンジンでも採用され、ホンダもハイブリッド用の直列4気筒エンジンで、減速の際にVTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)を活用し、バルブの作動を止めることでポンピング損失を減らす気筒休止を採用した。
それらのように、走行中に稼働するエンジンのいくつかの気筒の運転を停止することで、燃料消費やポンピング損失などを減らし、燃費を改善する技術が気筒休止である。
これに対し、アイドリングストップは、停車中のエンジンの作動を止める機能で、走らないときに燃料消費をゼロにするのが目的だ。
同時にまた、ハイブリッド車の場合は、モーター走行している間はエンジンの作動を止める。アイドリングストップといういい方はされないが、走っているのにエンジンのすべての気筒が運転を止めることが行われる。
いずれも、不要な燃料消費を抑え、燃費を改善し、二酸化炭素(CO2)排出量を削減するのが目的だ。
それにもかかわらず、近年は停車中にエンジンを停止するアイドリングストップをやめる自動車メーカーがある。理由は、規定された燃費性能をアイドリングストップなしでも達成しているから。また、アイドリングストップではスターターモーターの使用頻度が増えるため、補器用の鉛酸バッテリーが専用となり、交換時により高価になるからだという。
しかし、規定の燃費とは諸元上の話であり、実用面ではクルマを使う地域の交通環境で走り方が変わる。都市部などでは頻繁な発進・停止が繰り返され、アイドリングストップをすることによるCO2排出量削減効果は大きいはずだ。補助金や減税の対象になるかどうかではなく、実用面での実態を直視すべきである。
また、鉛酸バッテリーの値段が高くなるというが、モーター走行をより活用するハイブリッド車ではなく、エンジン車を選ぶなら、バッテリー代程度は環境対応費として負担するくらいの環境意識があっていい。本来であれば、排出ガスゼロを一刻も早く目指すべき時代に我々は生きている。
目先の金払いの損得ではなく、将来を見据え、みなが快適に、幸せに暮らせる社会に貢献する意識が企業にも消費者にも不可欠だ。目先ばかりに気をとられていれば、結局は自分自身に跳ね返り、大規模自然災害の被災者に誰もがなりかねないのである。