強引にもみえた欧米の「EV100%化」を望んだのはメーカーでもユーザーでもない! いまEV促進が停滞しているのは政治的要因だった (2/2ページ)

政治的背景によりEV市場の先行きは不透明

 では、なぜEVはいま、踊り場になってしまったのか。

 背景にあるのは、過度なESG投資からの揺り戻しだ。2010年代中ごろまで、EVはまだ特殊なクルマという認識をもつ人がグローバルで少なくなかった。テスラも「モデルS」「モデルY」を生産していることであり、いわゆるアーリーアダプターを対象としたビジネスに過ぎなかった。

 それが、2010年代後半になり、SDGs(国連持続可能な達成目標)、COP21でのパリ協定、さらに欧州連合の執務機関である欧州委員会が掲げた欧州グリーンディールなどによって、ESG投資の大波がグローバル市場を襲った。ESG投資とは、従来の財務情報だけではなく、環境、社会性、ガバナンスを考慮した投資を指す。

 こうしたグローバルな政治と経済の動きに、米中が対立し、狭間に欧州がいるといった構図となった。そうした対立構図はいまも維持されているものの、ESG投資マネーはいち早く冷え込んだ。さらに、中国経済の低迷、トランプ第二次政権の発足、欧州での与党が少数派になるといった状況となり、結果的にEV市場が先行き不透明になったといえる。

 こうして見てきたように、メルセデス・ベンツ、フォード、そしてボルボなど、欧米メーカー各社がEV戦略を軌道修正したのは、技術的な要件やユーザーやディーラーからの声ではなく、政治的な背景が色濃い。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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