こんなちっちゃいのにシボレーかよ! かつて行われたスズキとGMの提携は多くの日本人が知らないビッグプロジェクトだった

この記事をまとめると

■スズキは1980〜90年代にGMと業務提携していた

■日本でもシボレーにバッジエンジニアリングされたスズキ車が販売されていた

■スズキとGMの業務連携はお互いの強みを補完しあっていた

相互補完のための提携でスズキとGMは理想的な組み合わせだった

 日産とホンダの経営統合が話題になっている。スズキについては、いまはトヨタと業務提携を結んでいるが、それ以前にはGMと提携していた時期もある。

 スズキとGMは、1981年に提携を開始した。まずはGMがスズキの株式を約5.3%取得している。そしてスズキは、GM向けの小型車の開発と供給、GM工場におけるスズキ車のノックダウン生産と販売、1986年にはGMとカナダで合弁会社を立ち上げるなどの成果を上げた。

 これらの提携は、北米などの海外で行われたから、日本のユーザーにはわかりにくかったが、日本でも一部のスズキ車をGMブランドで販売していた。

 初代シボレークルーズは、2001年に発売された外観がSUV風のコンパクトカーで、スズキとGMが共同開発したクルマだ。内容は2000年に発売された初代スイフトに近く、初代シボレー・クルーズは、内外装を上質にアレンジして装備も充実させた。エンジンは1.3リッターに加えて1.5リッターも搭載している。

 2006年にはシボレーMWも発売した。ソリオをベースに開発された背の高いコンパクトカーで、外装ではエアロパーツやアルミホイール、内装では本革シートなどを標準装着した。装備や内装を充実させながら、2WDの価格を132万3000円と安く抑えたことが特徴だ。

 今日の複数メーカーによる業務提携の主な目的は、電動化や自動運転の技術を共通化して、多額の開発コストを抑えることだ。したがって日産/ホンダ/三菱という具合に、日本のメーカー同士の業務提携や経営統合も成り立つ。

 しかし、当時の業務提携は、販売する地域や車両カテゴリーの相互補完にあった。スズキは日本/インド/アジア地域などに強く、GMは北米とオペルを含めて欧州にネットワークがあった。スズキとGMが提携すれば、広い国と地域をカバーできる。

 また、スズキは軽自動車と小型車を主に開発/製造しており、GMは中型から大型の車種が多い。このようにスズキとGMは、それぞれ異なる地域と車種のカテゴリーに強いため、業務提携を積極的に行うメリットがあった。

 1999年に実施された日産とルノーの提携は、経営危機に陥った日産を救うことが目的だったが、両社の受けもつ市場も異なっていた。日産は日本/北米/アジアに強く、ルノーは欧州市場だ。日産とルノーが手を組んだことで、販売ネットワークを広い地域に拡大できた。

 スズキが販売していたシボレー・クルーズやMWは、スズキのスイフトやソリオの面影が濃厚だ。シボレーブランドを名乗るには物足りないクルマだったが、これは業務提携のごく一部に過ぎなかった。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
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13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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